岸田氏の「議連」旗揚げで政界に広がる“波紋”…“ポスト石破”での再登板狙いの臆測も
28日からの臨時国会の最大の焦点となる「103万円の壁」問題が、旧岸田派主導の形で「円満決着」に持ち込めれば、「岸田氏の党内的立場はさらに強まる」(自民長老)ことは間違いない。だからこそ、再登板説も浮上するのだが、岸田氏周辺には「首相経験者としての矜持を示すのなら、旧岸田派ナンバー2の林芳正官房長官を推し立てるのが政治的常識」(最側近)との声も少なくない。 そもそも岸田氏は、当選同期の安倍晋三元首相(故人)と親交が深く、「安倍氏も岸田氏を自らの後継者と考えていた」(安倍氏側近)のは間違いない。しかし、2020年8月末に安倍氏が体調不安で突然退陣表明したことを受けた総裁選に、石破、菅、岸田の3氏が立候補した際には、安倍氏は菅氏を支持し、岸田氏は大敗。それを受けて、当時の岸田派内では「もう岸田氏の首相就任はないから、林氏に代替わりすべきだ」との声が巻き起こり、「林派」への衣替えが具体化しつつあった。
ただ、当の岸田氏はこれに猛反発し、「1年後の総裁選で勝負すると決意したことで、林氏との距離ができた」(旧岸田派幹部)というのが実態とされる。「まさにその反発心と政権奪取への執念が、『総裁選勝利・3年間の岸田政権』につながった」(政治ジャーナリスト)ことは間違いない。 ■「再登板狙い」なら“岸田1強”喪失も さらに、「政治とカネ」問題への拙劣な対応で内閣支持率が低迷し、党内に「岸田降ろし」の風が吹き荒れた2024年7月の時点でも、「秘かに再選戦略を練っていた」(周辺)のは事実。しかし、岸田氏に首相の座を奪われた菅氏が、9月の総裁選での小泉進次郎氏擁立を画策していることを察知した7月末に「総裁選で負ければ政治生命を失うとの判断から、総裁選不出馬宣言による退陣表明に踏み切った」(同)というのが“真相”とされる。
その後の政局展開をみれば「岸田氏の決断は正しく、石破政権誕生が“岸田1強”への布石となった」(政治ジャーナリスト)ことは間違いない。ただ、首相経験者の岸田氏が「安倍氏の真似をするように再登板を狙うのは邪道」(自民長老)との声も相次ぐ。 足元の旧岸田派内からも「『ポスト石破』では林氏を担ぐことが岸田氏の党内実力者としての存在価値を高める」(若手)との声が相次ぐだけに、「今回の議連旗揚げとその後の岸田氏の言動次第では、せっかく手に入れた“岸田1強”も失いかねない」(政治ジャーナリスト)との指摘が少なくない。
泉 宏 :政治ジャーナリスト