昭和の記憶後世へ 弓削文庫企画展が開幕 沖永良部島で鹿大地域シンポ
国立鹿児島大学法文学部付属「鹿児島の近現代」教育研究センター主催の地域シンポジウム「沖永良部の近現代―沖永良部島の昭和」は6日、同島であった。知名町出身の郷土史家、故弓削政己氏が同町に寄贈した弓削文庫企画展示開幕の記念式典を行ったほか、昭和の歴史に焦点を当て、同大学と地元研究者らとの連続トークイベントを開催。昭和の時代に起きた戦争や災害体験などを記録、保全する重要性を訴えた。 同センターは特定の地域に着目したシンポジウムを開催しており、昨年に続き3回目。弓削文庫は弓削氏が収集した書籍や史資料など約1万点で、2018年3月、知名町に届けられた。同大学が町から整理作業の委託を受け、24年8月に約6500点の目録登録を完了。今回の企画展示では目録や寄贈の経緯、整理作業の様子などをまとめたパネルを展示している。展示期間は約2週間を予定。寄贈書籍などの公開日は未定としている。 式典は展示会場の知名町役場フラワーホールであり、同大学、町、町教育委員会、地元研究者など関係者約20人が出席。同センターの丹羽謙治センター長は「先生(弓削氏)の研究スタイルが奄美全体に伝わるような形で保存され、活用されていくことが大事」、今井力夫町長は「非常に価値のある蔵書。子どもたちにも新たな学びの場として提供できるのではないかと期待している」と述べた。
連続トークイベントは和泊町役場結いホールであり、約30人が参加した。同センターの鈴木優作特任助教が知名町出身の小説家一色次郎の戦争をモチーフにした作品を取り上げ講演した後、「歴史史料の収集・保全・利活用」をテーマに語り合った。 対象となる事象などから直接的に得た情報「一次資料」の保全について意見を問われた和泊町歴史民俗資料館の伊地知裕仁さんは「今後も戦争体験者から聞き取りを進めるとともに、残された資料を再度編集して分かりやすくし、皆さんに活用してもらう取り組みが必要」、知名町町誌編纂(さん)室の森田太樹さんは「(町誌編さんの取り組みの中で)集落に入っていく機会もあるので、戦時に一般の住民がどう避難したかなどを資料化していければ」と述べた。 続いてのトークテーマは1977年9月に襲来した「『沖永良部台風』の記憶」。当時35歳で役場職員だった伊地知実利さん(和泊町)が当日の役場職員の奮闘や被災者、自身の家族の状況などを振り返った。 同センターは沖永良部台風から50年の節目となる27年に向け、体験者の証言などを集める調査を進めるとし、協力を呼び掛けた。