廣岡達朗コラム「なぜ大谷は人の4倍、トレーニングするのか?」
「二刀流」を続けていく上で油断は禁物
ドジャースがヤンキースを破ってワールド・シリーズを制覇した。 ムーキー・ベッツは大谷翔平を評して「人の4倍トレーニングする」と話していた。それで分かったことがある。大谷はシリーズ第2戦で左肩を亜脱臼した後、それ以降の試合にも出続けた。ケガに打ち勝って一生懸命にやったとは思うが、急激に太ったように感じた。トレーニングをしたいのにできない日が1日、2日あったに過ぎない。ということは、彼は体質的に太りやすい。逆にいえば、だから人の4倍トレーニングする必要があるのだ。 【選手データ】大谷翔平 プロフィール・通算成績 今後も「二刀流」を続けていく上で油断は禁物。今回のようなケガに見舞われて練習ができなければ終わる。そのときに10年総額1000億円の真実が明らかになるだろう。メジャーの契約書には細かい条項がいくつも記されていて、金額に見合う働きができなければ支払われない。 そこへ行くと日本の契約はドンブリ勘定である。楽天の田中将大は金をもらい過ぎだ。年俸9億円の2年契約で2021年に日本球界に復帰しながら、4勝、9勝、7勝。今年は2億6000万円(プラス出来高)でプレーしたが、勝ち星はゼロに終わった。私は田中の日本復帰直後から懐疑的な見方をしていた。ヤンキースが本当に彼を必要としていたら手放すはずがない。あの時点でどこかに欠陥があった。にもかかわらず、日本のメディアはもろ手を挙げて歓迎した。その結果がこれだ。今の彼なら1000万円で十分である。 人間というのは、成長していく時期があり、その後は平行線をたどり、やがて落ちていく。この自然の論理をほとんどの人間が理解していない。名選手がいつまでも活躍できると思っている。幻想だ。それを知らない人間が評論家になるから困るのだ。
アメリカはルールが絶対
大谷には日本人の素晴らしさを、自らの姿勢や態度で見せてほしい。彼がチームに本当に溶け込んでいるかといえば、実際は分からない。一人勝ちする大谷にジェラシーを抱いている人間もいるはずだ。イチローも渡米当初は周囲から白い目で見られ、「帰れ」と言われたそうだ。引退時には「アメリカでは僕も“外国人”なんです」と口にした。 アメリカは多民族が一緒に生活している。だからルールが絶対だ。ルールにはみんな素直なのだ。イギリス、ドイツ、中南米。国によって空気が違う。こういうことを私が分かったのは、世界の野球を勉強するために一人で各国を回ったからだ。 のちにヤクルト、西武で「管理野球」と言われたのは、アメリカで感じた「ルールの徹底」を応用したのか? 私はやるべきことをやらせたに過ぎない。遠征先では禁酒。食事にもうるさく口を出した。それがルールの徹底と言われればそうかもしれない。とにかく、やるべきことをやった先にしか勝利はないのだ。