地球の地殻「海と大陸」どちらが先にできたのか…じつは「水の果たした大きな役割」を考えれば、おのずと見えてくる「地球形成のシナリオ」
海の「玄武岩地殻」、大陸の「花崗岩地殻」のできかた
まず海洋地殻は、マントルの橄欖岩が部分溶融してできた玄武岩質マグマが、海嶺から噴き出し、薄く広がって固まることでつくられます。 これに対して大陸地殻のほうは、もう少し手間がかかります。プレートの沈み込みによってできた玄武岩質マグマから結晶分化した、もしくはマントルから直接、部分溶融してできた安山岩質マグマは、地表に噴き出して島弧をつくります。島弧は集積して、最初の大陸をつくります。 この大陸にプレートが沈み込んだり、衝突したりして高温になると、大陸は再び溶けて、膨大な量の花崗岩となるのです。 以前の花崗岩についての記事でも述べましたが、「水がなければ多くはつくられないことから、地球ならではの石が花崗岩」と述べたように、このときも水が重要なはたらきをします。こうして、花崗岩からなる大陸地殻ができたと考えられています。 そして二つの地殻の配置は、大陸地殻が、海洋地殻の上に乗っかっているという関係にあります。
「地球の構造」は三つの石の均衡で成り立つ
それぞれの密度を比較すると、大陸地殻は2.7g/cm³くらいで、海洋地殻は3.0g/cm³くらいです。これは石でいえばまさに、花崗岩と玄武岩の密度に相当しています。そして、マントルをつくる橄欖岩は密度が3.3g/cm³です。したがって地球の構造としては、橄欖岩の上に玄武岩が乗り、その上に花崗岩が乗っている状態が、重力的にいちばん安定します。 このような状況を「アイソスタシー」(地殻均衡)といいます(図「アイソスタシー」)。言い換えれば、大陸地殻と海洋地殻はこの配置で安定しようとしているわけです。
原始地球から現在の地球への「進化の帰結」
もういうまでもなく、〈原始地球で起きた、衝撃の「隕石の重爆撃期」と、引き寄せられてきた「地球の材料」〉で述べたヒプソグラムからわかる地球の特異な2極構造も、大陸地殻(海抜0~1000m)と海洋地殻(水深4000~5000m)がいずれも20%以上を占めていることからきています(図「地球の地形のヒプソグラム」)。 これが原始地球から現在の地球への、進化の帰結です。そこには、三つの石がそれぞれに、きわめて大きな役割を果たしていたのです。 三つの石によって、地球にはほかの惑星にはない特徴ができあがりました。まず層構造が生まれ、プレートがつくられ、プレートテクトニクスが起きて、水が大循環して地球の内部へと運ばれるようになりました。水は生命をつくる一方で、地下深くに運ばれることによって島弧をつくり、島弧が衝突・集積することで大陸が誕生しました。私たち人間を含めた、多くの地球生命が住める場所ができたのです。 三つの石が地球を特別な星へと進化させたのです。 * * * 地球の成り立ちには、「水」が大きな役割を果たしてきましたが、その役割の大きさは、地球の材料です石(鉱物)の特徴的な構造を知ると、より深く理解できます。次のシリーズでは、石のサイエンス「鉱物と結晶の世界」についての解説お届けします。 三つの石で地球がわかる――岩石がひもとくこの星のなりたち
藤岡 換太郎