フィットネストラッカーの「消費カロリー」を鵜呑みにできない理由と対処法
運動時にフィットネストラッカー(活動量計)を使っている人もいるでしょう。 しかし、実はその数字は正確とは言えません。その理由を解説していきます。
フィットネストラッカーが消費カロリー量を計算する仕組み
フィットネストラッカーの示す数字がどこまで正確なのかを検証する前に、まずは、トラッカーそのものの仕組みを知っておきましょう。 加速度計タイプ たいていのトラッカーは、加速度計を使っています。手首につけるスマートウォッチタイプのトラッカーなら、リズミカルに揺れる前後の動きと、上下動の両方を検知すると、ユーザーが歩いていると判定します。 また、上下の動きがさらに激しくなり、手首の動きが小さくなると、走っていると推定するのです。 心拍センサータイプ もう1つ、運動のタイプを判別するのに使われているのが心拍センサーです。 エクササイズ中の手の動きは、常に予測可能なパターンに当てはまるわけではないので、今はサイクリングをしているとか、ヨガのセッション中だとか、運動の種類をユーザーからトラッカーに伝えるほうが手っ取り早いでしょう。 トラッカーはなんらかの数式を使って、装着している人の消費カロリーをはじき出しています。さらにこの数式に、その人の年齢や体重、性別が反映されることもあります。 というわけで、フィットネストラッカーは、あなたがどれだけのカロリーを消費したかを実際にカウントしているわけではなく、不完全な情報をもとに、数字を計算しているだけなのです。
学術研究でわかったフィットネストラッカーの実態
ここで、残念なニュースをお伝えしなければなりません。 Apple、Garmin、Polar、Fitbitのさまざまな製品を検証した2020年の研究では、すべてのトラッカーにおいて、正確であるケースより、不正確なケースのほうが多いことがわかったのです。 この研究論文の著者は、実験室の環境において、デバイスの数値が、より正確なエネルギー消費量の計測値(=消費カロリーの実測値)と比較して±3%の範囲内に入っていれば、正確と判定することにしました。 では、トップブランド製品の成績を見てみましょう。 Garminのデバイスは、表示される消費カロリー量が実測値を下回っていた時間が、全体の69%を占めていた。 Apple Watchでは逆に、実測値を上回っていた時間が、全体の58%を占めた。 Polarのデバイスでは、実測値を上回っていた時間が、69%を占めた。 Fitbitでは、総計測時間の48%で実測値より少なく、39%で実測値より多く表示された。 Fitbitのデバイスは、平均すれば、だいたい正確な値を示していましたが、だからと言って有用とは言えません。 使っているデバイスの示す数字が、ある時は実際より大きく、またある時は実際より小さいという場合、現時点でどっちにずれているのかがわからなければ、あまり参考にならないからです。 また、Fitbitデバイスに絞って検証を行なった2018年発表の論文では、装着場所はどこか(手首より胴体につけたほうが正確)、歩いている場所が上り坂かどうか、一定のスピードで歩くか、それとも時々立ち止まるか、といった条件によって、正確性が大幅に違ってくることがわかりました。 また、製品モデルによっても、計測のクセがあります。Fitbit Classicが消費カロリー量を少なく見積もりがちなのに対し、Fitbit Chargeは多めの数字が出る傾向がありました。 いずれにせよ、これらのデバイスは、実際にどれだけのカロリーを消費しているのかを把握できるほど正確ではなかったということです。 いずれも正確性は低い さらに、2022年になって発表された、比較的最近の研究では、「Apple Watch Series 6」、「Fitbit Sense」、「Polar Vantage V」の3機種を比較しました。 この研究では、研究チームはボランティアの被験者に、3種類のトラッカーすべてを同時に装着した状態で、静かに座る、ウォーキング、ランニング、サイクリング、筋トレという5種類の活動をしてもらいました。 その結果、すべての製品で、すべての活動について、正確性の変動係数は15~30%に達し、「正確性に劣る」との判定が下されました。