東京・江戸川区の駄菓子屋さんが“居場所”に「互いにラベリングすることなく、一人の人として関わって、受け入れていく場所なんです」
「上柳昌彦 あさぼらけ」の番組本、「居場所は心(ここ)にある」の出版から、間もなく1年となります。この1年、様々なシーンで、ますます「居場所」という言葉を聞く機会が増えました。 東京・江戸川区にも、様々な事情を抱えた人たちの「居場所」となっている駄菓子屋さんがあります。とある女性が店長を務めています。 それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
都営地下鉄新宿線の瑞江駅近くに、一軒の駄菓子屋さんがあります。お店の名前は、「江戸川区駄菓子屋居場所 よりみち屋」。ここは、江戸川区がひきこもり状態にある方の居場所や仕事が体験できる場所として、2023年に開いた、いわば、“区営の駄菓子屋”さんなんです。 マンションの1階にあるお店に伺うと、懐かしさを憶えるお菓子がズラリ。近所の学校帰りのお子さんはもちろん、年配の方も立ち寄っていく様子も見られます。奥に設けられた交流ルームは、何気ないおしゃべりやゲームを楽しむ穏やかな雰囲気。そのなかには、勇気を振り絞って、お店のドアを開けてくれた方もいます。 店長を務める石川玲子さんは、福島・郡山の出身で、小・中・高と3人のお子さんを育てているお母さんです。十数年前、縁あって江戸川区に住むようになり、今はお店の運営委託先の企業を設立した医療法人に籍を置きながら、「よりみち屋」の店長を務めています。 石川さんは小さい頃、ご近所のおばあちゃんたちに面倒を見てもらって育ち、自然と、子供が大好きになりました。そんな石川さんが衝撃を受けたのは、中学校の道徳の時間です。フィリピンのストリートチルドレンが劣悪な環境でも必死に生き抜く映像にハッとします。 「こんなに頑張っている子供たちがいるなら、私にも、何かできることがあるはずだ」 そう思った石川さんは、大学に進学したのち、インド・コルカタにあるマザー・テレサの孤児院へボランティアに赴きます。そこでは、世界各地から集まった志ある人たちと一緒に、様々なハンディキャップのある孤児とふれ合う経験も積みました。