おむすびで人を結び、まちを元気に 身近で健康支える看護師・小鹿千秋さん
おむすび店の店主は看護師さん-。大阪府八尾市で「おむすびスタンド むすんで、にぎって。」を営む小鹿(こしか)千秋さん(37)は、ふだんの暮らしの中で病気の予防や早期発見ができるように働きかける「コミュニティナース」として活動する。おむすび店はその一環で、地域住民の健康を身近で見守る〝お守り〟のような存在だ。「おむすびを通して人とつながり、まちを元気にしたい」という小鹿さんに会いに店を訪れた。 【写真】注文を受けてから、おむすびをつくる小鹿千秋さん こぢんまりとした店内には古い日本家具や古道具が使われ、割烹着姿の小鹿さんの明るい笑顔とあいまって、どこか懐かしく、ほっとするような雰囲気が漂う。おむすびは専用のブレンド米で作り、甘塩鮭や南高梅、昆布などの定番のほか、地元産の旬の野菜を使った期間限定の「気まぐれむすび」など計12~13種類を常時そろえている。 「いつものスパイシーツナマヨと…」。常連の女性客が注文すると、小鹿さんはおむすびを作りながら「調子は?」などと声をかける。急いでいる人のために作り置きも2~3種類用意しているが、注文を受けてから作るスタイルにこだわる。「できたてを食べてもらいたいのもありますが、待ってもらっている間にコミュニケーションをとれるのが大きい」と話す。 おむすびをいつも4つ購入するおじいさんの注文が2つだった日、「食欲がないの?」とたずねると、同居するおばあさんが入院中だとわかった。次に来店した際には「退院した?」などと続きの会話が交わされる。暑い日の来店客には「お水を飲んでる?」と声をかけ、熱中症への注意を促す。「ちょっとした一言が、自分のことを気にかけてくれる人がいるというシグナルになる」と言う。 病院で働いていた頃、「ひどくなる前にもう少し早く来院していたら…」と思うケースを数多く見てきた。だから、常連の女性客の「病院に行くほどでもないと思いながらも、ちょっと気になっていることを聞ける人が近くにいるのは心強い」という言葉は何よりうれしい。 「おむすびは人を結ぶ、地域を結ぶコミュニケーションのツール。つながりを作ることを大切にしています」