4カ月早く400gで生まれ、生死をさまよった娘 「助けてください」願った母…〝母乳バンク〟が救った命
なんらかの事情でお母さんの母乳が得られない、小さく生まれた赤ちゃんのために、寄付された母乳(ドナーミルク)を提供する「母乳バンク」。東京都内にある拠点のひとつが、5月中旬にリニューアルしました。記念式典では、母乳バンクを利用した母親が「ドナーミルクに助けてもらったおかげで、今の娘がいる」と感謝の言葉を述べました。(withnews編集部・河原夏季) 【画像】22週6日400gで誕生、NICUに入院していた頃の女の子
施設面積2倍、処理能力は3倍に
リニューアルしたのは、一般社団法人日本母乳バンク協会が運営する「日本橋母乳バンク」(東京都中央区)です。 施設面積はおよそ2倍になり、最新式の低温殺菌処理器や、冷凍庫などを新たに導入しました。処理能力はこれまでの約3倍に。機械の購入には、2023年に実施したクラウドファンディングの支援費が使われています。 現在、国内にある母乳バンクは東京と愛知の計3カ所。「日本橋母乳バンク」と「日本財団母乳バンク」(東京都中央区)では、ドナーから寄付されたドナーミルクを低温殺菌処理し、安全性を確認した上で病院からの要請を受けて提供しています。 東京で災害が起きた際に供給が途切れないよう、2023年には藤田医科大学病院(愛知県豊明市)にもドナーミルクのストック拠点が開設されました。
1500g未満の赤ちゃんは年間6000人
多くの赤ちゃんは妊娠37~41週(正期産)で生まれ、平均出生体重は約3000gです。2500g未満で生まれる赤ちゃんは「低出生体重児」と呼ばれます。より早く小さく生まれるほど、命の危険や障害、病気のリスクが高くなり、医療的ケアが必要なこともあります。 ドナーミルクを利用するのは、早産(妊娠22~36週)などで1500g未満の小さな体で生まれた「極低出生体重児」が中心です。 日本母乳バンク協会の代表理事で小児科医の水野克己さんによると、1500g未満で生まれた赤ちゃんは腸など様々な器官が成熟しておらず、病気や感染症のリスクが高いといいます。 十分な体重で丈夫に生まれた赤ちゃんは、牛乳由来の粉ミルクや液体ミルクを問題なく消化吸収できますが、小さく生まれた赤ちゃんは成分をうまく消化できず、負担になってしまいます。 しかし母乳を与えた場合、人工ミルクと比べて、腸の一部が壊死(えし)する「壊死性腸炎」にかかるリスクを3分の1に減らせるそうです。 日本小児科学会などは、病気や服薬、体質といった様々な理由で出産した母親の母乳をあげられない場合、ドナーミルクを推奨しています。 厚生労働省の人口動態調査によると、1500g未満で生まれる赤ちゃんは年間およそ6000人です。 2023年度にドナーミルクを使用した赤ちゃんは1118人で、NICU(新生児集中治療室)のある病院95施設で使われました。 2014年に始まった母乳バンクですが、ドナーミルクを使用した赤ちゃんが初めて年間1000人を超え、累計では2600人以上になりました。