4カ月早く400gで生まれ、生死をさまよった娘 「助けてください」願った母…〝母乳バンク〟が救った命
4カ月早く生まれた娘に
リニューアル式典では、ドナーミルクを利用した赤ちゃんの家族が、当時の心境について語りました。 2019年、予定日より約4カ月早い妊娠22週6日で400gの女の子を出産した女性=奈良県在住=は、出産の翌日に夫とともに主治医からドナーミルクの説明を受けたといいます。 女性は、そこで初めてドナーミルクの存在について知りました。 「最初にあげられるのが自分の母乳じゃないんだ……」と複雑な思いはありましたが、主治医の丁寧な説明を受け、「生死をさまよっていた娘にできることは何でもしてほしい。『助けてください』という気持ちで決断した」と振り返ります。 自分の母乳が出るまでの約5日間、ドナーミルクを使っていたそうです。 出産時、主治医からは「22週で生まれた赤ちゃんが生存して退院できるケースは50%」と説明されていました。しかし、もうすぐ5歳になる娘は大きな病気もせず、毎日幼稚園に通っているといいます。 「生まれて数日の大事なときにドナーミルクに助けてもらったおかげで、今の娘がいます。周りの方々に支えられてここまで大きく育てることができたことを感謝しています」 一方で、ドナーミルクを利用できる病院は限られています。 「どこの病院で出産しても、ドナーミルクを使えるかどうか選択肢のある社会になってほしいと思います」
母乳バンク、今後の課題は
多くの赤ちゃんや家族を支えてきた母乳バンクですが、運営資金の確保やドナーミルクの利用施設、ドナー登録できる施設の拡大など課題を抱えています。 2023年11~12月に行われた日本母乳バンク協会のクラウドファンディングでは、2890人から目標を大きく上回る2400万円以上の支援金が集まりました。しかし、クラウドファンディング分を除くと赤字経営だといいます。 運営資金は企業・個人からの寄付や病院との年間契約費などでまかなっていますが、円安の影響でイギリスから輸入する殺菌処理に使う器具が高騰し、負担が重くのしかかります。 運営スタッフも不足していますが、資金不足のため増員が難しい状況です。 ドナーミルクを提供する母親が登録できる施設は、現在、関東を中心に40を超えました。しかし、居住地からアクセスのよい場所に登録施設がなく、ドナーになりたくてもなれないという声もあります。 日本母乳バンク協会の水野さんは、「みなさまのご支援によってドナーミルクの処理能力は増えましたが、安定した運営のためには資金と体制の確保が課題です。引き続きひとりひとりの大切な命を守るため、提供いただいた母乳を安全に小さな赤ちゃんに届けていきたい」と話しています。 ◇ ◇ ◇ 日本では、およそ10人に1人が2500g未満で生まれる小さな赤ちゃんです。 医療の発展で助かる命が増えてきた一方、様々な課題もあります。みなさんの体験談やご意見をお寄せ下さい。 【アンケートフォームはこちら】https://forms.gle/dxzAw51fKnmWaCF5A