“LUUP”が観光客の二次交通の一助となるか? 公共交通が衰退する「地方の移動問題」に取り組む
■地方こそ限られた交通機関を高齢者が利用できる施策を…若い世代に移動の選択肢を提供することで解消できる
「LUUP for Community」は移動課題を抱えた自治体だけでなく、広大な敷地が広がるレジャー施設などにも提供されている。 「カートの貸出や周遊バスの運行などを行なっているレジャー施設もありますが、友人同士やカップルなど少人数グループには『自由に移動できるLUUPが向いている』とのリアクションをいただいています。貸出カートはファミリーに、周遊バスはゆったり過ごしたい高齢者にと、観光客同士でも移動の選択肢が広がれば、より多くの方が施設を楽しんでいただけるのではないかと思います」(Luup 鈴木さん) さまざまな意見はあれど、風を受けて走る電動キックボードや電動アシスト自転車は爽快だ。風光明媚な観光地ならばなおのこと、単なる移動がアクティビティになるのも「LUUP for Community」の導入効果と言えるだろう。 「昨年の実証実験では、海岸線を走るのが気持ちよかったという反響を多くいただきました。地域住民からもおおむね好評だったことから、今年5月の再導入では田園方面まで提供エリアを少し広げています。カルガモが小ガモを連れて歩いている風景など、クルマ移動では見過ごしてしまうような当町の魅力を、たくさんの方に楽しんでいただきたいです」(おおい町 常木さん) 提供エリアを広げることで今後は想定外の課題も出てくるかもしれないが「そのたびにしっかりと向き合い、対処したい」と常木さん。現状は観光客の利用が多いが、ゆくゆくは“地元の足”としての定着を目指している。 「昨年の試乗会では、ボランティア参加してくれた地元の高校生たちがとてもイキイキしていたのが印象に残っています。やはり若い方ほど馴染みやすい乗り物なのでしょう『話題の電動キックボードに乗ってみたかった』と言っていた子もいましたね」(おおい町 常木さん) 一方で、地方が抱える移動課題には“高齢者の免許返納”も大きく関係している。 「足腰の弱い方に電動キックボードは必ずしも推奨できません。公共交通が衰退している地方こそ、限られたバスやタクシーを高齢者がきちんと利用できるように、若い世代に移動の選択肢を提供する必要があると思いますし、『LUUP for Community』もその一助になりたいと考えています。加えて弊社では、高齢者も利用しやすい3輪~4輪の新しい形の電動マイクロモビリティの研究開発も行なっているところです」(Luup 鈴木さん) 電動キックボードばかりが取り沙汰される同社だが、目指しているのは「誰もが移動に困らない社会を実現すること」。その意義は、公共交通の脆弱な地方ほど発揮されるかもしれない。自由な移動は経済活性にも繋がるだけに利用者1人1人がしっかり安全意識を持ち、このサービスが地域社会にポジティブな影響を与えることに期待したい。