<独占インタビュー1>羽根田が語るカヌー銅メダルの真実
――夢の話を聞いて驚きました。夢を見るようになったのが、ロンドン五輪後ということは、ロンドンでの7位入賞が自信につながったのですか? 「大きなきっかけにはなりました。『目標が達成できるんじゃないか』という現実が、自分の中から出てきた。周りからの期待じゃなくて。それが夢となって出てきたんでしょう」 ――閉会式にも参加せず帰国されたとか。 「開会式には出ましたが、閉会式には出ていません。スタッフは、選手村の空き部屋の関係で帰らないといけないらしいんですが、選手は希望すれば最後まで残れるというオリンピックのルールがあるそうなんです。でもロンドン五輪のときもそうでしたが、自分の試合が終わると、一日でも早く帰りたいんです。あのときも、自分の試合が終わると、オリンピックに辟易しました。そこまでにエネルギーを使い果たしたせいだと思うんですが、オリンピックのマークを見るのも嫌でオリンピックの空気自体が嫌になるんです」 ――それほど五輪に気持ちを高めたんですね? 「僕には、そういう傾向があるようです」 ――3度目の出場となった五輪のプレッシャーはありましたか。 「期待をしてもらっていたのでプレッシャーはありました。ただ、自分の中では、北京、ロンドンと経験していたので五輪への慣れがあって落ち着いて臨めたんです。それに観客が少なかった(笑)。そのことが少なからずプラスに働きました。 ロンドン五輪のときは、2万人以上のお客さんが集まって、スタンドも満席で、声が凄かった。お客さんが多ければ燃えるものもありますが、少し戸惑いはあったんです。欧州で行われる国際大会も、お客さんが少ないので、リオではいつもの大会と同じ気持ちで臨めたんです」 ――今回のコースが羽根田さん向きだったというのは本当ですか? 「僕に合っていたと思います。北京、ロンドンと、スケールが大きな川でした。落差があって、水量も大きく、波のひとつひとつが大きくてパワーの必要なコースでした。でも今回は、落差が少なめ。複雑な流れがたくさんあって、大きなパワーよりも繊細な技術が、0.1秒を分けるというコースでした。実際に4位とは0秒14差でした。4位、5位の間もそうです。差が1秒なかったんです。そこが勝負を分けました」 ――昨年11月のプレ大会で2位になりました。その経験が生きたのですか? 「あそこがリオ五輪のコースとのファーストコンタクトでしたが、11月はカヌーシーズンの終わりで、他の選手は、コースチェックを兼ねて遊びがてらに出ていたんです。だから、2位になったことで自信を深めたということはあまりなかったんです。ただ周りの選手は、非常にやりにくそうにはしていました。でも、僕にはその感覚はなく、もしかしたら周りの選手よりも僕の方がマッチしているかもしれないとは思いました」 ――全長約250メートルの人工コースに24個のゲートが設置されるそうですが、そのゲートはいつセッティングされるのですか? 「前日にセットされて、実際、コースを見ることができます。ただ、実際にテストで下ることはできす、デモンストレーションとして見本で何人かが下るんです。それを参考に見てイメージを組み立てます。映像を使ったシミュレーションなどには取り組んでおらず、経験とイメージを元に、どういう戦略がベストかを考え、後はスタートしてから、瞬時に臨機応変に判断していくんです」 ――イメージの中で勝利のラインが見えたりするものですか? 「そういう逸話があれば面白いんですが(笑)。一瞬、一瞬のシビアな判断が勝敗をわけます。コンクリートの人工コースですが、波や流れに何があるかわからない。一瞬の判断を間違えると、ゲートに触れて命とりになるんです」