マツダ新型ロードスター、大幅改良で何が変わった? 走りにより磨きをかけた4代目ND型を試す。【試乗レビュー】
マツダ ロードスターが大幅改良、と聞いても写真を見ただけでは何がそんなに変わったのかほとんどわからない。というわけで、モータージャーナリストの原アキラが伊豆のワインディングで新旧モデルの違いを確かめてみた。 【写真】新型ロードスターはどこが変わった?(全26枚)
見た目は変えず、走りを変える
1989年にロードスターの初代NA型が誕生して35年が経ち、現行の4代目ND型はデビュー後9年目というロングセラーモデルだ。そのロードスターがさらに生き延びるためには、今後規制が強化される自動車のサイバーセキュリティ対策(つまりソフトのハッキング対策)と車外騒音に対応して、まずは電子電気系プラットフォームを全面刷新する必要があった、というのが今回の大幅改良の第1の目的だった。 そして、せっかくならば現行モデルで気になっている部分にもしっかり手を入れていこう、というのが第2の理由だったのだという。まあ、我々ユーザーとしてそっちの方が気になるわけで、早速新型のステアリングを握り、伊豆スカイラインに乗り入れてみた。 最初に乗ったのは新型NDの下から2番目のグレード「Sスペシャルパッケージ」だ。通常マイチェンモデルというとグリルやライトの形状を新しくすることで変化したことを強調するものが多いのだけれど、ロードスターはその逆。 前後ライトは形を変えることなくLED化し、中央にナンバープレートがあるグリルの形状も変更なしで、小型のレーダー受信部を左端に設置することができている。ホイールはストレートスポークデザインへとわずかに変更されている。 インテリアもほぼ変更なしで、表示がシンプルになった3眼メーターと8.8インチへと幅広になったセンターディスプレイぐらい。ブラックのシートはセンター部分がCX-60などに採用されて好評だったスウェード調のレガーヌになっていて、座面や背面のホールド感が心地よい。
走りの進化、3つのファクト
なんだ、その程度か、とここでがっかりしてはいけない。走りは大きく進化していた。そのファクトの1つ目は、操安性能開発本部の梅津大輔主席エンジニアご自慢の「アシンメトリックLSD」を新たに採用したことだ。旧モデルの「スーパーLSD」と入れ替えられたこちらは、円錐クラッチ型LSDに、減速側と加速側で異なるカム角の機構を設定することで、それぞれの場面で最適な差動制限力が実現できているとの説明だ。 特に減速側の制限力が強まっているとのことで、実際に下りでゼブラがひかれたコーナーにブレーキングを入れながらフロント荷重で侵入するような場面では、なんとなくお尻がムズムズするような感覚があった旧型(2年前に990Sで同じ場所を走った。これはこれで、ヒラヒラ感があって面白かったのだが)に対して、ピタリと後輪がグリップし続けているという安心感を感じることができた。 こうした場面では、モーターアシストの制御ロジックをマツダの内製化とし、構造を変えることで取り付け部のゴムブッシュを廃止した新しい電動パワーステアリングシステムの恩恵も、2つ目のファクトとしてしっかりと感じられる。切り始めだけでなく、“戻し”の状態でもステアリングの重さが変わらず、鼻先とステアの量が正比例して変化していくのが伝わってきて、本当に気持ちいいコーナリングができるのだ。 そして3つ目のファクトが、1.5Lエンジンのパワーアップ。従来はグローバルのハイオク(オクタン価96)に合わせていたセッティングを、国内専用(同99~100)に合わせたことで、出力は3kW(4PS)アップ。コーナーを過ぎて加速する際にはエンジン回転の上昇率も上がった感じで、レッドゾーンの7,000rpmまでの針が一気に回っていく。 アクセル操作への制御ロジックも最新のものに変更されていて、加速時だけでなく、次のコーナーへの減速時には回転が早く下がるセッティングになっていて、得意な方にはシフトダウンのしがいがある楽しい操作感が味わえるようになった。