「娘を注意した教官に二度と会わせないで」“度を超えた要求”する自動車教習所のカスハラ客たち
「免許の不正取得」を後押した教習所の末路
過去には、とんでもないモンスター客のせいで事件に発展したケースもありました。 教習所には学生ばかりではなく、免許の取り消しや失効などで再取得を目指し入所してくる40代以上の教習生もいます。関東近郊のとある教習所では、何度卒業試験を受けても合格できない男性がいました。そこでその男性は、教習所に対し脅しをかけたのです。 「次の試験で合格させなかったら、どうなるかわかっているのか」と。 その男性の身分はよくわかりませんが、いわゆる反社か、それに近い立場の人だったのではないかと言われています。 案の定、卒業試験には合格できず、しかし教習所は合格証書を発行し、卒業させてしまったのです。その後、男性が免許を不正に取得したことがわかり、逮捕。教習所にも行政指導が入り、その教習所は閉業に追い込まれたそうです。筆者がこの話を聞いたのは、当時のことを知っている先輩教官から。そのため、なぜ不正取得したのが明るみになったのか詳細はわかりません。
「カスハラ対策に力を入れる教習所」が増加
不正が故意ではなく、単に人的ミスで起きてしまったとしても、管理体制などが厳しく問われます。例えば、受講する順番が決まっている講習があり、手違いでその順番を間違えてしまったということは、たまにありますし、教習所に対する行政指導は、少なくても数年に一度は全国の教習所で起きています。 教える立場である教官と、教わる立場である教習生という関係上、教習所ではカスハラは起きにくいと言われてきました。しかし近年では、従業員や会社を守ることを目的に、カスハラ対策に力を入れる教習所も増えてきています。自治体でもカスタマーハラスメント対策として相談窓口を設置したり、専門家を派遣したりしています。 カスハラはどんな業界でも起きうる可能性があります。自分がどんな立場であれ、過度な要求はしないようにするという意識こそが、カスハラ根絶につながるのではないでしょうか。 <TEXT/室井大和> 【室井大和】 自動車ライター。出版社の記者・編集者を経て、指定自動車教習所の指導員として約10年間勤務。その後、自動車ライターとして独立し、コラムや試乗記、クルマメーカーのテキスト監修、SNS運用などを手がける。
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