デザイナー独自の審美眼が光る! ファッション業界のトップランナー5人が語る腕時計の“着こなし”方
アイウエアづくりに活かす、緻密デザイン
ロレックスを長年愛用していたアイウエアデザイナーの今泉悠。しかし現在は、2021年に購入したパテック フィリップの「ノーチラス 3800/1A」一択だという。 「 お世話になっている石川県加賀市の時計専門店、エンツォショップさんから、パテック フィリップが気になっているタイミングで連絡があって購入を決めました」 この時計は希少なモデルかつ今泉が好む37㎜径。角のある腕時計は初めて手に入れたが、デザインの完成度の高さに驚いたという。 「スクエアのケースは存在感が強すぎるものが多いイメージでしたが、これは八角形の幅広のベゼルと小径の文字盤のバランスで品よく控えめに収まっている。デザイナーとしてすごく勉強になります。面取りした縁の鏡面仕上げ、ヘアライン仕上げで演出する質感の変化、細かなディテールが凝縮されている点が素晴らしいです」 まるでアートピースと呼んでもいいプロダクトだと語る今泉。アイウエアづくりに、さぞ影響を与えていることだろう。 PATEK PHILIPPE / パテック フィリップ「ノーチラス 3800/1A」
語れる文脈が、コレクター心をくすぐる
心躍るディテールやデザインで彩られた、ハレの日に着ていきたくなるような良質な服を手掛けるサンカッケー。古着や軍物にも精通するデザイナーの尾崎雄飛は、ブランパンのダイバーズウォッチ「フィフティ ファゾムス」が好きで、年代やデザインの異なる4本をコレクションしている。 「諸説ありますが、初代のフィフティ ファゾムスはロレックスの名作、サブマリーナより1年早い1953年に発売されて、サブマリーナに影響を与えたと言われていますよね。70年ほどの歴史の中で、ダイヤルのバリエーションが無数にあって、サブマリーナに比べて完成されていないデザインが魅力。仏軍、米軍、独軍に納品されてきた実績もあり、ファッション文脈的にも語れることが多くあってお洒落な時計だと思います」 所有する4本のうちいちばんのお気に入りは、行きつけの時計店で入手した「フィフティファゾムス ノー ラディエーション」。 「1960年代半ばに登場した時計で、特にドイツ海軍の潜水戦闘機部隊が使用したそうです。フィフティ ファゾムスといえばこれ!というモデルであり、少し大きなベゼルや長めのラグなどアンバランスな部分もありながら、全体で見ると調和の取れたデザインだと思います。文字盤にラジウム入り発光塗料が未使用であることを示すマークが記されているところも、よい違和感があって面白い。カジュアルな服装に合わせるだけでなく、スーツにこの時計を着けて、ジェームズ・ボンドっぽく楽しむこともありますね。もちろん、軍物のパンツやジャケットとの相性は抜群です」 BLANCPAIN / ブランパン「フィフティ ファゾムス ノー ラディエーション」