持続可能な離島医療に向け提言 奄美大島でシンポジウム
地域住民と一緒になって奄美の医療について考える「第1回奄美地域医療シンポジウム『健康長寿の奄美大島×持続可能な地域医療』」が8日、鹿児島県奄美市名瀬のアマホームPLAZAで開かれた。奄美大島の救急医、勤務医、開業医、行政、大学の医師たちがそれぞれの視点で奄美の医療の現状と課題を発表。会場に訪れた一般市民と持続可能な離島医療の在り方について意見を交わした。 県立大島病院、鹿児島大学病院地域医療支援センター、奄美市の共催。人口減少が進み、医師の高齢化や開業医の閉院が相次ぐ中、奄美の医療機関を取り巻く現状を知り、将来どうあるべきか、医師だけでなく住民や行政と一体となって模索していく狙い。 基調講演では、奄美群島で19年間健康調査をしてきた鹿児島大学の嶽﨑俊郎地域医療センター長が、生活習慣に見る奄美群島民の長寿の強みを報告。シンポジウムでは県立大島病院の中村健太郎救命救急センター長、名瀬徳洲会病院の平島修副院長、みんなの診療所の原純所長、名瀬保健所の相星壮吾所長が、各自の視点でこれからの奄美医療に必要になるポイントについて提言した。 会場の医療関係者や行政関係者、高校生からも多くの質問や感想が寄せられ、活発な議論が展開された。
■組織の壁越えた連携を 「住民の主体性」が鍵
「奄美に医師を呼ぶにはどうしたらよいか」「待っているだけではだめ」「自分が主体的になる意識が大事」。8日、初開催された奄美地域医療シンポジウムで、医師や会場からは活発に意見が出され、予定時間を大幅にオーバーするほど白熱した会となった。 県立大島病院の救急医である中村健太郎医師は、ドクターヘリの稼働状況について解説し、県立大島病院の医療資源にも限りがあるとして、県境を越えた急患対応が必要と提案。名瀬徳洲会病院の平島修医師は徳洲会グループの強みを整理しながら「人生に寄り添う医療を目指す」と話した。 勤務医から開業医になった原純医師は、所属の垣根を越えて医療機関同士がもっと連携する必要性を指摘。名瀬保健所の相星所長は来場者に「皆さまこそ地域の主役。主体的に関わってほしい」と呼び掛けた。 会場からは離島医療で問題となっている輸血用の血液備蓄所の再設置についてどう改善を図るべきか問う声も。相星所長は「みんなが自分のこととして主体的に関わることで、一人が1ミリずつでも前進していくことに尽きる」と答えた。 また、沖縄県への搬送を可能にした与論島での住民運動のエピソードや、医師が奄美に定着するための課題、医療機関の組織の壁を越えて連携を模索する意見なども寄せられた。 シンポジウムを聞いた県立大島高校生(18)は「地域医療が切迫していることを知った。自分も医師を目指しているのでいつか島の医療に貢献したい」とコメント。奄美市名瀬の女性(83)は「たまたま聞きにきただけだったが、内容に驚いた。自分に何ができる分からないが、まずは知ることが一歩だと思う」と話した。