円キャリーが25年復活か、金利差は依然高水準-低ボラティリティーも
(ブルームバーグ): 外国為替市場で相対的に金利が低い円を売り、ドルなど高金利通貨を買う円キャリー取引は2024年に起きた大規模なポジション(持ち高)解消の動きが一巡し、再び人気が復活するとストラテジストらは予想している。
金融先物取引業協会や東京金融取引所、米商品先物取引委員会(CFTC)のデータからブルームバーグが推計したところ、日本の個人投資家や海外のヘッジファンド、資産運用会社などは11月に円売りポジションを135億ドル(約2兆200億円)まで積み増したもようだ。10月の97億4000万ドルから大幅な増加となる。
市場では日米の金利差や米国の財政悪化懸念、相場のボラティリティーの低さなどを背景に円売りに賭ける動きは来年さらに活発化し、日本銀行が7月に追加利上げを行う前の水準まで回復するとの見方が出ている。
ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)のアジアFX戦略責任者、アルビン・タン氏は「円に対する絶対的な金利差が非常に大きいということは、常に資金調達通貨として見なされることを意味する」と指摘。キャリー取引の資金調達通貨として使われない場合の主な理由は、「ボラティリティーの高さだ」と述べた。
円キャリー取引が再燃すれば、世界の金融市場に影響を及ぼす可能性がある。円売りポジションの強烈な巻き戻しが起きた今夏は世界の株式時価総額が3週間で約6兆4000億ドル消失し、日経平均株価の下落率は1987年以来、最大を記録した。
円売りを促す最大の理由は国内外の金利差だ。主要10通貨(G10)と新興国通貨の平均利回りは6%を超す半面、日銀の政策金利はわずか0.25%。日銀はもう一段の利上げを模索しているが、双方の格差はなかなか埋まらない。ANZバンキング・グループのアナリスト、フェリックス・ライアン氏は日本の政策金利が1%程度に上昇しても、円キャリー取引は依然有効との見方を示す。
円キャリー取引が成功した場合の投資家のリターンは大きい。21年末以降にG10と新興国通貨に対し円を売った場合のパフォーマンスは45%高と、再投資された配当分を含む米S&P500種株価指数の32%高を上回っている。高パフォーマンスへの期待から7月末に円売りポジションは216億ドルまで膨らんだが、直後に急激な巻き戻しが起こった。