円キャリーが25年復活か、金利差は依然高水準-低ボラティリティーも
サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は日銀の利上げは日米金利差を埋めるには不十分だと指摘。米国の債務と財政状況はトランプ次期大統領にとって最重要課題の一つで、円キャリー取引のポジションは今年前半水準まで戻ってくる可能性があると言う。
減税や関税などトランプ氏の政策は米国のインフレを高止まりさせ、財政の悪化を招く恐れがあるほか、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースを鈍らせると警戒されている。米10年債利回りは直近2カ月余りで3.6%台から一時4.4%台まで急上昇した。
次期財務長官に財政規律派と目されるベッセント氏が指名され、足元で一連の警戒感はやや薄れているが、みずほ証券の大森翔央輝チーフデスクストラテジストは「結局はトランプ氏次第だ」とし、早ければ円キャリー取引が1月にも復活すると予測。「ベッセント氏がトランプ氏の権力に屈するリスクを忘れている。地位にとどまりたければ、予算に関し強硬な姿勢は取らない」とみる。
キャリー取引は、運用成果の不確実性を高めるボラティリティーが低位にとどまっていることが前提だ。JPモルガン・チェースが算出するグローバルFXボラティリティー指数は、米新政権への不透明感やウクライナ情勢の緊迫化に対する懸念が高まっているもかかわらず、新型コロナウイルス禍の2020年に付けた15%台と比べると低水準で推移している。
12月中旬に開かれる日銀の金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)で、投資家は円キャリー取引に関する明確な見通しを得られるかもしれない。日銀の植田和男総裁がハト派的な姿勢やFRBのパウエル議長がタカ派的な姿勢を示したり、金融政策に影響を及ぼすデータが公表されたりすれば、円キャリー取引が活発化する可能性がある。
みずほ証の大森氏は「日銀の利上げペースは緩やかになるだろうし、パウエル議長もすぐに利下げを行わないなら、金利差はキャリー取引にとって魅力的なものになるだろう」と指摘。加えて日本の財務省は為替介入にそれほど積極的ではなく、通貨当局が静観するなら、投資家は円キャリー取引を「行わない理由はないと感じるだろう」と言う。