須﨑優衣、レスリング世界女王の強さを築いた家族との原体験。「子供達との時間を一番大事にした」父の記憶
小学生時代の指導が攻めのレスリングの原点に
――優衣さんと麻衣さんの運動神経の良さは、和代さんと康弘さんから引き継いだ部分もあるんでしょうか。 康弘:僕は割と運動神経は良いほうでしたけど、お母さんはどうだった? 和代:私は悪くはなかったのですが、クラスや学年でちょっと足が速いほうとか、そんなレベルで、トップレベルでやっていたわけではないです。2人に関しては後から身につけたものも大きいと思います。 ――小さい頃からレスリングをやることで、子どもたちの運動神経や成長にもいい影響があるのですか? 康弘:ありますよ。子どもの頃は神経系が発達するので、筋力トレーニングをするよりは、マット運動とかランニング、縄跳びなど、あらゆる運動に共通するような全体的な体の動きを鍛えることができるので、レスリングをやめてから他の競技に移るにしても、非常にいい基礎運動ができると思います。 ――全身運動で動きのバランスが良くなるのですね。優衣さんは最初から競技志向だったのですか? 康弘:最初は違いました。子どもたちの中には全国チャンピオンや千葉県のチャンピオンを目指す子もいたんですが、麻衣と優衣に関しては「家族で仲良くレスリングを楽しめたらいいな」という感じで教えていたので、遊びの延長で続けて、本人が好きになれば本格的に教えていこうかな、というぐらいに考えていました。 ――スピードに乗ったタックルや投げ技、寝技など、多彩で攻撃的なレスリングの基礎もその頃に培われたのでしょうか? 康弘:優衣は、腕や足がもともと細かったんですが、体幹はかなり強くてしっかりしていたので、基本的な腕立てや腹筋、背筋はしっかりやらせていました。普段は練習で厳しいことはあまり言わなかったですし、自分から前に出ていく試合は負けても勝っても褒めていたんですが、後ろに下がって逃げるような試合をした時は少し叱りましたね。それが、今のレスリングにつながっている部分はあるかなと思います。 ――和代さんはレスリングに真剣に取り組む優衣選手をどんなふうに見ていたんですか? 和代:レスリングは体力作りにいいと思っていましたが、オリンピックに出させる選手にしようとか、出てほしいとかはまったく、考えたこともなかったです。小学校1、2年生の頃は男女一緒に組まれることが多く、その頃はほとんど勝ったことがなかったですね。3年生からは女子の部になるんですけど、そこから試合もできるようになって、勝てるようになっていくのを頼もしく見ていましたね。