楽天グループ副社長執行役員CMO・河野奈保さんに聞くキャリアストーリー。「ジョギングのように毎日少しずつ前に進むことが未来への近道」
連載「Road to 役員 ~働く私たちが先輩に聞きたいこと~」:楽天グループ副社長執行役員CMO・河野奈保さん
キャリアアップを目指すOggi世代に向けた連載「Road to 役員 ~働く私たちが先輩に聞きたいこと~」。活躍する先輩たちの成功や失敗、そこから得た知識やスキルが、今よりもっと素敵な自分に出会うヒントになるはずです。今回、お話を伺ったのは楽天グループで副社長執行役員を務める河野奈保さん。 【写真をすべて見る】「楽天のビジョンやミッションに惚れて働いているので、何かあっても、それが大きな支えになっています」 〈全2回の第1回。第2回は記事下の「関連記事」からご覧いただけます〉 中途採用で楽天に入社し、楽天市場事業で営業やマーケティングを担当したのち、モバイル事業の責任者を務め、40歳で最年少かつ初の女性常務執行役員に就任した河野さんに、これまでのキャリアストーリーや現在の仕事内容とやりがい、子育てやプライベートとの両立などについてお話を伺いました。 ◆いかに「効率」を上げるかを考える。結果としてリーダーに繋がった Oggi編集部(以下同)──副社長執行役員として、普段はどのような仕事をされているのでしょうか? 河野奈保さん(以下敬称略):楽天グループでは、楽天市場・楽天カード・楽天トラベルなど70以上のサービスがあり、それぞれに特徴があります。一方で、同じ楽天IDを使えることや、どのサービスでもポイントを貯められるといった共通点もあります。このバランスを見ながら統括するのが私の主な仕事です。 また、昨今の流れで言いますと、弊社では次の世代に向けてAIを積極的に導入しています。私たちの部署でもAIのトライアルを行い、成功事例を積み重ねることで、グループ全体のマーケティング効率を向上させていきたいと考えています。 ──20年以上にわたるキャリアを通じて、ライフステージにも変化があったかと思いますが、仕事のやりがいにも変化は見られましたか? 河野:最初は「自分の仕事って何だろう?」「自分の得意分野は何だろう?」という感じで、自分自身の仕事のアウトプットに重きを置いていました。20代は特にそうですね。でも、徐々にマネジメントを任される機会が増えてきて、タイトルがつくことに喜びを感じる一方で、同時に不安も芽生え始めました。 自分がやってきた方法が、本当に成功なのか分からない中で、部下に何を教えればいいか迷う時期もありましたし、教育の難しさだけでなく、現場から離れていく不安もあり、“任せる”ということへのハードルがありました。 それでも、自分一人ではできない大きなプロジェクトをチームで達成できることを知ると、それが楽しみに変わりましたね。そういう経験を積み重ねてきたことで、やりがいも変化してきたと思います。 ──昔からリーダーシップを取るタイプでしたか? 河野:独りでやるよりも、誰かと対話しながら行動する方が好きでした。例えば、今日やって非効率だなって思った部分を明日もう一度繰り返すって、億劫じゃないですか。だから、昔から昨日より今日をもっと効率よくやれる方法を考えて提案するタイプだったと思います。 「リーダーシップを取るタイプ」ではないと思いますが、自分の提案や行動でチームの効率を向上させることで、リーダーシップの一端を担っていた部分はあるかなと思います。 それに、提案するということは、自分がそこにいるという意味があるというか、居場所ができるんですよね。私はリーダーになりたいという気持ちよりも、せっかくその一員になったので、自分がその一員として認められるような存在になりたいと思う気持ちが強かったんです。 ◆今、自分に求められるのは「通訳者」としての役割 ──「昨日よりも今日」という言葉もあったように、常にポジティブなマインドがあるように感じられますが、ネガティブな感情になることもあるのでしょうか? 河野:20代は、仕事がわかってきた自分への自信と挫折との繰り返しで、心身ともにバランスを崩すことがありました。ある時期、発言がネガティブになっていることを自覚し、ポジティブな考え方について書かれている本を集中的に読みました。具体的な本のタイトルは覚えていませんが、自分の発言や考え方を変えるきっかけを求めていたんです。 たとえば「こんなことがあって、信じられない」という怒りや悲しみを伴うネガティブな言葉を、「こんなことがあって、驚くけど……面白いよね」と言い換えることで、気持ちも切り替わります。ネガティブな話は負の連鎖を生みますが、ポジティブな話に変えることで、自分も周りも前向きになれます。 最初は意図的に言葉を変えていましたが、次第に楽観的な考え方が身についてきました。今でも愚痴は言いますけど(笑)、「まあ、やるしかないよね」と切り替えています。 ── 仕事や会社を辞めたいと思ったことはありますか? 河野:もちろんありますし、誰もが一度や二度は思うんじゃないでしょうか(笑)。重要なのは、何のためにやっているのか、誰のためにやっているのかが自分の中で納得できているかということ。私は楽天のビジョンやミッションに惚れてこの会社で働いているので、何かあったとしても、それが大きな支えになっています。 あとは、家族以上に長い時間一緒にいる会社の仲間は裏切れないですよね。仲間がいるからこそ毎日頑張れていて、その延長線上がたまたま今日、という感じですね。 ──大勢の部下を率いる立場として、部下に接するときに気を付けていることはありますか? 河野:弊社では、社長から私個人に指示があるときもあれば、全体へ指示が出ることもあります。その場合、背景や過去の経緯を知っている私は、指示の内容を部下にわかりやすく伝える「通訳者」としての役割を果たすことができると思っているので、私はチーム全体の理解度を高め、引っ張っていけるように伝えることを意識しています。 また、世の中の基準や常識は日々変わっていくので「昔はこうだった」という固定観念にとらわれず、昔の経験を生かして「今はどうあるべきか」と考えて、私自身も進化し続けなければいけないなと思っています。 ──過去に本を集中的に読んでいた時期があると仰っていましたが、今も情報収集のために読書されますか? 河野:今は本を読む時間はなかなか取れませんが、情報収集は欠かせません。マーケティングの分野にいるので、世の中で何が起きているのか知っておきたいんです。 ニュースなどはとにかく量を重視しているため、YouTubeで1.5倍速や1.75倍速で見ます!(笑) また、ネットニュースのコメントやX(旧Twitter)の投稿の反応もチェックし、一般の声をマーケティングリサーチとして活用しています。