楽天グループ副社長執行役員CMO・河野奈保さんに聞くキャリアストーリー。「ジョギングのように毎日少しずつ前に進むことが未来への近道」
◆仕事も育児も常に全力! その融合が楽しい
──今4歳のお子さんを育てるお母さんでもいらっしゃると聞いています。ただでさえ忙しい仕事と子育ての両立に不安はなかったですか? 河野:私は、6週間の産休のみで育休や時短を取らずに復帰しました。弊社ではほとんどの社員が育休を取りますし、復帰率も97%以上と環境は整っています。なので決して休まないことを推奨しているわけではないのですが、私の場合はずっと子どもと二人きりだと不安が増してしまいそうだったので、復帰して会社の託児所を活用する選択をしました。 保育士さんや他のママさんたちと情報交換をして、育児について相談できたことが、大きな助けになりましたし、初めての子育てで夫も私も手探り状態だったので、会社の支援があったおかげで、本当に安心できました。私にとっては復帰することでむしろ心のバランスを保つことができたんです。 ──今は仕事と育児のバランスはどのようにとっていますか? 河野:どちらも全力でやっています! 朝は5時に起きて家事をしていますが、子どもと向き合う時間も大事にしたいので、幼稚園に送るまでいろんな話をします。仕事中は集中して、定時には帰るようにしているので、子どもの顔を見に行くのが楽しみです。 仕事は自分の意思で進めている分、プライベートでは子どもが話すことに耳を傾けたり、一緒に何かを楽しんだりしています。ママさんネットワークも、今や私にとってなくてはならない情報源(笑)。 ワークライフバランスって言うと、常にバランスを取り続けなきゃいけなくて大変ですが、私は「ワークライフインテグレーション」という言葉が好きで。両方が融合して、相乗効果でどっちにもプラスになっている感じがしています。 仕事の経験が育児に役立ったり、その逆もあったりして、ふたつを切り分けて考えることはないですね。 ◆手を抜かない! 日々の積み重ねが成功の鍵 ──日本において、プライム市場上場企業における女性役員の割合は2023年時点で13.4%。決して高くはない数字ですが、女性がもっと活躍するためにはどのようなことが必要だと感じていますか? 河野:私は、自分が女性であることをあまり意識せずに仕事をしてきました。楽天では、新卒採用で女性の方が少し多いくらいですし、育休取得率も高く、復帰率も97%以上です。女性が働きやすい環境が整っているので、女性としてのロールモデルというよりも、個々のダイバーシティが重要だと感じています。 ただ、「女性役員」になると、やはり「女性としてどうですか?」と聞かれることが多く、そのたびに違和感を覚えました。楽天では、多様な国籍の人々と働く中で、性別よりも個人の意思が重要視されるため、性別はそれほど重要ではないと感じています。 それでも、女性の役員が増えれば、ロールモデルも多くなり、若い方たちが自分が思い描く未来を想像しやすくなります。そうすることで、より多くの女性が自分らしく生きられるようになるのかなと思います。 ──将来的に会社の中枢を担う立場を目指すのであれば、30代のうちからやっておいたほうがいいと思うことを教えてください。 河野:将来のビジョンを持つことはもちろん大事ですが、今一緒に仕事をしている仲間や環境を大切にすることもすごく重要です。信頼を得て結果を出すためには、日々の仕事に丁寧に取り組むことが欠かせません。 手を抜けば、それを見ている人は必ずいますし、一度手を抜くと次の日から取り戻すのが大変です。だから、ジョギングのように毎日少しずつ前に進むことが一番持続可能な方法です。 とはいえ、精神的に辛い時期もありますよね。そんなときは、周りにSOSを出すことを恐れないでください。助けてくれる環境を作っておけば、いざというときに支えてもらえます。私も出産後、どれだけ周りの助けがありがたいと思ったことか……。 日々の積み重ねを大事にして、ひとりで悩まず、困ったときは信頼できる仲間を頼ることが、未来への近道だと思います。