通天閣9日から臨時休業へ 名物社長「従業員に休業告げるの辛かった」と涙
取引先の返品を通天閣で半額販売で支援も行っていた
そして、もう一つ理由があった。それは「土産物」の菓子を扱う、通天閣の取引業者の悲鳴を耳にしたことだった。お菓子には「賞味期限」がつきもので、各地の施設が休館しているため、業者はトラックの荷台スペースをほとんど占めるほどの菓子商品返品を受けていた。 高井社長は、廃棄するにもゴミの分別などでお金がかかり困っているという業者の声を聞き「取引先の皆さんの力になれば」と通天閣の地下入り口付近に特設売り場を作り、各地で返品されたお菓子を半額にして販売するなどしていた。 この取り組みは一石を投じ、多くのマスコミにも取り上げられ話題となり、後にはそれらの菓子をセットにした「通信販売」も人気を呼んだ。
8日の入場者30人、高井社長「とどめを刺された感じです」
しかし、新型コロナウイルスの感染者が日に日に増え、大阪府では3週連続で週末の外出自粛要請があった。通天閣でも新型コロナウイルス対策を講じた上で展望台をオープンしていたが、今月6日の入場者数は80人、7日は60人、そして、きょう8日は30人となってしまった。 「きょうの入場者数でとどめを刺された感じです」と高井社長。実は、7日に閉めるという案もあったが、8日に開けてみてから判断しようと決めていたという。 高井社長は「通天閣は暇な時でも一日3000人は来てもらってました。それが8日は30人。新型コロナウイルスの影響を従業員とともに肌身で感じて共有し『これが結果ですよ』と分かり合えた」と辛い胸中を語った。
「地域ならびに地元のみなさんへの責任は果たせたかと思います」
「大阪観光局に電話で聞いても、こうした観光施設で開けているのはうちだけと聞きました。これまで菓子の半額販売とか知恵を絞って頑張ってきましたけど、新型コロナウイルスと賞味期限に追われるばかり。けどこれで、地域ならびに地元のみなさんへの責任は果たせたかと思います」と語った。実際に、新世界の飲食店などは、8日現在で閉まっている店も多く、高井社長は少し孤独感もあったそうだ。 そして、7日の緊急事態宣言。安倍晋三首相の会見や、宣言を受けて行われた大阪府の吉村洋文知事の会見をみても、休業要請はないものの補償もないという現状は響いた。しかし、高井社長は「これは、どこの施設でも会社でもそう。うちだけじゃないので」とつぶやいた。 そんな中で決めた今回の臨時休業。「従業員にあしたから休めというのは辛くて、言葉が詰まってしまって。いつまで続くかわからないコロナの中では、どんどん月収が減っていってしまう、本当に申し訳ない。そういう中で、業者支援の菓子販売や通販で雇用の最低限確保をはかってきました。新型コロナウイルスの前で太刀打ちできない自分の力のなさというか、精一杯やり遂げたというか悔いはないんです。大阪の観光施設の最後の砦(とりで)になったという思いはありますが、従業員に申し訳ない」と高井社長は涙声で語った。