無敗でJ首位独走のサンフレッチェ広島はなぜ強い? その秘密に迫る
これまでの苦い経験から、現実にもしっかり目を向ける必要性を痛感してきた。だからこそ組織的な守備網の構築を急いだ。8試合でわずか2失点、ひとつはPK、対戦相手を零封すること実に6度という群を抜く堅守に、指揮官は「決して守備的に戦っているわけではない」と力を込める。 「ドン引きして守ることだけが、守備の練習ではありません。いかにして前からボールを奪えるか。守備をしているけれども、自分たちがイニシアチブを握っているような場面を作り出せるのか、ということも含めて練習してきました」 基本陣形を「4‐4‐2」として、2トップには前線からの献身的なプレスを求めた。両サイドハーフに対しても然り。ボランチの一角にはJ1でも屈指の運動量の多さを誇りながら、昨シーズンは14試合の出場にとどまった、甲府時代の愛弟子でもある稲垣祥を抜擢した。 開幕以降も練習メニューに走り込みを入れるなど、リーグ戦と同時進行でスタミナ増強にも徹底して取り組んできた。城福監督も「運動量が多ければいい、というわけではない」としながらも、たくましさを増してきた選手たちに手応えを感じている。 「追い求めているアグレッシブな攻守には、絶対的な走力も必要なので。おそらく選手たちは、あまり経験したことがないような厳しい練習をしています。よく耐えてくれていると思っているし、成果が出ているという意味でも嬉しいですね」 戦い方も確立されてきた。マリノスとの第7節を除いて、シュート数はすべて相手を下回った。それでも粘り強く、かつ激しい守備で時間の経過とともに相手の体力を削いでいく。11ゴールのうち9ゴールを後半に奪ってきた軌跡は、試合巧者へ変貌を遂げつつある証と言っていい。 しかも、辛勝ながら無敗をキープしてきたなかで、2012シーズン以降の4年間で3度もJ1を制した名門に、失われつつあった自信も蘇ってきた。2015シーズンの優勝に貢献したMF柏好文は言う。 「もともとは力のあるチームであり、上位で戦えるチームだと僕は思っている。みんながもう一度、自信をもってサッカーができていることが大きい」 実はYBCルヴァンカップのグループCでも2勝1分けの無敗で首位に立ち、わずか1失点と堅守を武器としている。同じ練習メニューを消化しながら、リーグ戦ではなかなか出場機会に恵まれないサブ組が躍動している姿も、チームに相乗効果をもたらしていると指揮官は目を細める。 「紅白戦では実はサブ組が勝つことが多いんです。ちょっとでも気を抜けばサブ組に取って代わられるという、競争の激しさというか、いい意味での危機感も我々のエネルギーに変わっている」