田舎の隠れた魅力を再発掘~水田に浮かぶ人気ホテル
“水田に浮かぶ”人気ホテルの仕掛け人!異色ベンチャーの全貌に迫る!
出羽富士・鳥海山を望む山形県の庄内平野。日本でも有数の米どころだが、この田園風景の中に見る者の意表をつく建物がある。田植え前の田んぼの中に佇むホテル「スイデンテラス」だ。 【動画】大人気!水田の風景を活かした「スイデンテラス」の全貌
館内は大きな窓から光が差し込み、開放感いっぱい。部屋に向かう廊下には山形ゆかりの本をそろえたライブラリーも。客室の大きな窓に広がるのは何もない田園風景だが、それが新鮮に映る。 風がない日はホテルがまるで田んぼに浮かんでいるように見える。四季折々、表情を変える田園風景と共にホテルの魅力も移ろいでいく。こんな唯一無二の景観に惹かれ、今や年間6万人が訪れる人気施設だ。 田んぼの真ん中から外を眺める露天風呂も用意されている。地下1200メートルから掘り当てた源泉掛け流しの天然温泉だ。ホテルの一番の売りはディナー。鶴岡市は日本で初めて、ユネスコ食文化創造都市に選ばれた食材の豊かな土地。
山形牛をはじめ地元の食材を駆使した料理4品を選ぶイタリアンやフレンチのコースが味わえる(コース料理つきで料金は1泊2食、1万7800円~)。 ホテルを設計したのは、プリツカー賞など国際的な賞を受賞している世界的建築家の坂茂さんだ。坂さんが初めて手がけたホテルということで取材も殺到。観光地でもない場所に客が押し寄せるのだ。地元の人からも「地域が潤っている」「魅力を発信してもらっている」と、歓迎されている。 「スイデンテラス」を運営しているのは旧「ヤマガタデザイン」で、この春からSHONAIに社名変更した。本社は元小学校の一部を鶴岡市に間借りして使っている。中はほとんど小学校の時のままで、元音楽室がオフィスだ。社員は現在120人で平均年齢は35歳。その8割はUターンやIターンだと言う。
東京生まれの社長・山中大介(38)も以前は三井不動産で働いていたが、山形の魅力に惹かれ移住。2014年に「ヤマガタデザイン」を設立した。 「我々が解決したいのは日本の地方課題。課題を解決する事業を作ることで山形・庄内で生まれたモデルが日本全国に展開して、他の地方都市の課題解決につながればいいなと」(山中) 山中の熱い思いに触れ転職してきた社員も多い。 「地方創生を実現しようと動いている企業がない中で、ここであれば実現できるのではないかと思って転職しました」(元NHK記者・長岡太郎) 社員を外部から引っ張ってくるのは山中の戦略だ。 「多様性をどんどん地方企業に入れていくことで、企業は絶対に成長します」(山中)