被害拡大も苦戦するクマ駆除 報酬過少だけではない、現場のリアルな声「適法な発砲か不安」札幌猟友会
●「適法な発砲かどうか」不安覚えながら引き金を引く現状
鳥獣保護法の改正で、一定の要件のもと市街地での銃猟が可能となることについて、玉木氏は「狩猟者の不安感軽減が期待できる」と前向きに捉えている。 「現在、市街地での猟銃使用については、『警察官職務執行法4条』や緊急避難を定める『刑法37条』などを駆使し、なんとか『違法性を阻却』して用いている状況です。 もっとも、我々狩猟者は猟銃の引き金を引くたびに『違法性を阻却できる状況だったのかどうか』が問われるため、常に不安感を抱えていました。銃猟使用の条件が緩和されれば、不安感の軽減が期待できます」
市街地での発砲条件が緩和されることは「迅速な対応が可能というメリットがある」と話す。 「過去の判例などから、鳥獣保護法で銃猟が制限される『住居が集合している地域』は、『人家と田畑が混在する地域内にあり、周囲半径約200メートル以内に人家が約10軒ある場所』と言われています。 ただ、『長年人が住んでいない空き家は人家になるのか』『物置として使われている人家も人家になるのか』など、見ただけでは簡単に区別がつきません。 そのため、駆け付けた警察や行政も、クマが現れた場所が『住居が集合している地域』に該当するのかを現場で即座に正確に判断することは容易ではありません。 改正法によって『市街地であっても必要であれば(発砲可能)』ということになれば、現場の判断も速やかに行うことができ、迅速な対応ができるようになると思います」
●発砲して事故が起きれば「狩猟者個人の責任」
ただ、玉木氏は「検討会でこれまでに比較すれば必要な議論がされているが、実際の現場での適用の具体的な運用部分はまだ見えてきていない」とも言う。 「現在、物損事故を始めとした狩猟活動を続けるうえで想定される事態に対応してくれる保険に我々はすべて加入しています。裏を返せば、狩猟者が問題を起こした場合、その責任は狩猟者個人が取らなければいけないため、保険に入らざるを得ないのです。
保険料自体はそれほど高額ではありません。それでも、被害を与えた場合には加害者になってしまう。一方で、警察が同じような問題を起こしても国が責任を取ってくれます。 防除に関わる狩猟者も住民の生活を守る役割を担っているのですから、責任の所在を個人に背負わせている現状を変えていただきたい。今回の改正法を検討するうえで、政府はしっかり現場の声に耳を傾けてもらったように感じています。引き続きこの点についてもより一層現場の意見に耳を傾けてもらい、議論していってほしいです」