フライ級転向の寺地拳四朗が10月13日、王座決定戦のリングへ! ボクシングの集大成に向けて見る「夢」
「前回の試合ではリングに向かう前のウォーミングアップで、すでに息切れするような状態でした。身体にエネルギーがない状態で試合に挑んでしまった、という反省はあります」 とインタビューに同席した加藤健太トレーナー。 いまやボクシング業界では「拳四朗の陰に加藤トレーナーあり」と言われるほど、蜜月な師弟関係は有名だ。拳四朗のインタビュー時、著者は加藤の同席をお願いした。試合に向けた戦略は加藤が考え、拳四朗はリング上でそれを忠実に表現するのが「チーム拳四朗」のスタイルだからだ。 拳四朗は2017年5月の世界タイトル初挑戦時、三迫ジムのサポートを受けたことをきっかけに加藤と知り合い、コンビを組むようになった。拳四朗本人はもちろん、拳四朗が初めて世界チャンピオンになるまで指導してきた父親、BMBボクシングジムの寺地永(ひさし)会長(90年代中心に活躍した国内屈指の重量級ボクサーで竹原慎二とも対戦。元日本ミドル級&東洋太平洋ライトヘビー級王者)も全幅の信頼を寄せ、6度目の防衛戦となったジョナサン・タコニング(フィリピン)戦からはチーフセコンドの座を譲り、自身は営業面のサポート役にまわった。 「(カニサレス戦は)戦術的には間違っていなかったと思います。『序盤から脚を使ったボクシングで戦っていれば』という声も耳にしましたが、カニサレスが元気な状態でそれをしても、おそらく勢いに飲み込まれていた気がします。結果論なので何とも言えない部分もありますが、アタックを多くして、相手をどれだけ弱らせられるか、という戦い方を中盤まで出来たから、残り2回、11、12回で脚を活かした戦いができたのではないでしょうか。 拳四朗はプランを完璧に遂行してくれました。しっかり準備をして、こう動くと決めた事は100パーセントできました。ただし相手の予想外の攻撃、予想外の試合の流れに対しての対応が落ち着いてできなかった部分はありました。勢いよく緩急をつけて攻められた時、落ち着いて対応できる術を持っていなかった。それは今後の課題です」 対戦相手の映像を繰り返し見て戦略を立てる研究者気質の加藤に対して、拳四朗は会場に足を運んでボクシング観戦することもなければ、映像で試合を見ることもない。高校進学のため父に勧められるまま半ば強制的にボクシング部に入部し、競艇選手になる実績を作るため大学卒業後にプロ転向した。日本チャンピオンになる頃までボクシングは好きではなかったが、それでも世界の頂点までたどり着いたいわば天才肌。世界チャンピオンになって初めて、ボクシングの魅力を知り興味も持つようになった。その大きなきっかけとなったのが、加藤との出会いだった。 「加藤さんに言われた通り戦って負けたらしゃあない」と話すなど、いまもボクサーとしてのすべてを加藤に委ねていた。 ■いまは気持ちが揺れることも多いですね