ナイキがレブロンのシューズカスタマイザーを告訴…約85億円の損害賠償請求を起こす
数々のNBAプレーヤーをサポートしてきたナイキ社が、カスタムスニーカーの権威として名を馳せる「ザ・シュー・サージョン」に対して、商標権侵害とナイキ製品の偽造の疑いで6000万ドル(約84億6000万円)の訴訟を起こした。 『Basketnews』によると、ナイキ社はニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に提起されたこの訴訟において、創業者兼CEOのドミニク・シャブロンが率いる「ザ・シュー・サージョン」が“甚だしい”商標権侵害および故意の偽造を行ったと主張。また、同社のオンラインプラットフォームや米国内の実店舗をはじめとする複数のチャンネルでナイキの偽造品製造と販売をしたほか、eBay、Rufflesとの共同プロジェクトをはじめ、さまざまなコラボレーション企画でナイキの商標を無断使用したとされている。 「ザ・シュー・サージョン」は、ロサンゼルスに拠点を置くシューズカスタマイズの第一人者。その名のとおり、“靴の外科医”を名乗る彼らは市販のスニーカーを贅沢な素材に置き換えるラグジュアリーなカスタムに定評があり、高級グッチや世界的な高級車として知られるベントレーなど各シーンにおけるトップブランドとのコラボレーションを実現している。 ナイキ社やバスケットボールシーンとの繋がりも非常に深いものがある。2017年にはシカゴでジョーダンブランドの看板の下、インフルエンサー向けにリメイクプロセスをレクチャーするワークショップを開催。また、リーグのスニーカーキングとして知られるPJ・タッカー(ロサンゼルス・クリッパーズ)は、「ザ・シュー・サージョン」が手がけた『コービー 1 プロトロ』を試合で着用しているほか、最多得点記録を更新したレブロン・ジェームズのためにもメモリアルな特注のゴールドシューズをナイキ公式で製作した実績もある。 ナイキ社は商標侵害に加えて、「ザ・シュー・サージョン」がナイキとの過去のオフィシャルな取り組みを利用し、自社の信頼性を高め、正当性に誤解を招くようなアクションを取っていることも非難している。 オレゴンの大手スポーツブランドは、「ザ・シュー・サージョン」に対して何度も注意勧告をしたにもかかわらず改善が見られなかったため、今回の訴訟という手段を選択。また、訴訟にともない以下の声明を発表している。 「我々の願いは、消費者が惑わされることなく、高い基準によって生産され、期待通りのパフォーマンスを発揮する正規のナイキ製品を入手できるようにすることです。この問題を解決しようと何度も試みたにもかかわらず、偽造、大量のカスタマイズ、商標権侵害を理由にザ・シュー・サージョンに対して法的措置を取らざるを得なくなったことは大変残念に思っております。ブランドと知的財産を守り、ナイキ製品の模倣品から消費者を守るというナイキのコミットメントに沿うため、我々はザ・シュー・サージョンがどのようにしてナイキの模倣品をゼロから作り、公式ブランド製品として販売しているのか、法的解決策を模索するしかありませんでした。我々はザ・シュー・サージョンとの関係を大切にしており、ナイキがスポンサーを務めるアスリートとの契約で許可されている限り、彼が私たちや彼のクライアントのために提供している1点もののカスタマイズには何の問題もありません」 一方で、「ザ・シュー・サージョン」はナイキ社からの声明に対して、歴史あるブランドとのコラボレーションは夢のようだとしつつ、「話し合いよりも訴訟を選択したことに困惑している」とコメント。しかし、適切な対話と協力があれば、経営陣とこの問題を解決し、カルチャーの勝利に変えることができると確信していると前向きな回答を残している。 伝統と技術、そしてスニーカーカルチャーを重んじる両者の間に発生した訴訟問題。カスタマイズというグレーな一面もあるこの問題は、どのような着地を迎えるのだろうか。 文=Meiji
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