もはや“推し活”ではなく“パパ活”…投げ銭に高級シャンパンまで乱れ飛ぶ「ファンビジネス」の実状
オタクの性質が変わってきた
そうは言うものの、生活費をギリギリまで削って推しに貢ぐ行為は健全といえるのだろうか。長年、アイドル関係のメディアで編集に携わってきたR氏は、ここ10年ほどの間にオタクの性質が様変わりしたと話す。「Aさんは新興宗教にハマっている人と同じ。Tさんは推し活ではなく、完全に“パパ活”になっている」と、切り捨てる。 R氏によれば、一昔前のオタクは、アイドルオタクも、アニメオタクも、周りに理解されなくても、自分が好きなものがあればそれでよかったのだという。アニメオタクもコミックマーケットなどのイベントを除けば趣味を表に出す機会は少なく、たまにオフ会を開く程度で、ひっそりと活動する人が多かったらしい。当時はグッズの種類も少なかったため、オタクを続けても「意外と金がかからなかった」という。 ところが、ここ数年の推し活ブームによって、趣味を隠さず、堂々とカミングアウトできるようになった。町を歩いていると、痛バッグを持ち歩く人はごく普通に見かける。オタクが市民権を得ている証しといえるし、趣味の多様性を認める風潮が広まったという意味でも、歓迎すべき傾向だと筆者は思う。しかし、R氏はこう危惧する。 「『電車男』が2004年にヒットして、深夜アニメが一般層にも視聴されるようになり、2010年代にはあらゆるオタクが市民権を得たと思います。コンビニでもアニメグッズが販売されるようになりましたからね。これ自体はいいことだと思うんです。ただ、これによって『オタク相手の商売は儲かる』という意識が生まれ、オタクをATMとしか思わないような企業や、さきのコスプレイヤーのような個人が増えてしまったのは嘆かわしい。今や、オタクはとんでもなく金がかかる趣味になってしまったと思います」
SNSの普及が推し活をエスカレートさせた
R氏は、推し活のブームで、企業がオタクを食い物にしだしたと嘆く。特に顕著なのは、グッズの粗製濫造だ。特に声優やアイドルのライブでは、会場限定のグッズをこれでもかと販売し、ファンの射幸心を煽る。ファンの間でも、当初はグッズの種類が増えたことを歓迎する動きはあったというが、最近は企業側の姿勢に疑問を抱く人も少なくないという。 「一昔前のライブはファンサービスの一環のようなものだったのですが、今ではもはやライブがメインコンテンツで稼ぎ頭になっている。そのせいか、ライブのグッズなどは『粗利がどれだけ大きいんだよ!』と突っ込みたくなるような、質の低い代物ばかり出す企業もあって、モラルの低下が著しい。企業はオタクを食い物にしすぎだと思いますし、言っちゃ悪いけれど、そんなものに乗せられるオタクもどうかと思います」 推し活に貢ぐ人が増えた事情は、SNS抜きには語れないとR氏は言う。SNSが普及したことで、「周りの目線ばかり意識しながらオタクをやっている人が増えた。その心理を巧みに利用しているのが推し活ブーム」と言う。「僕からすれば、事実上企業の言いなりになってグッズを買いまくる人は、オタクではなくてただの消費者です」とのことである。