浦和レッズは“バグ”を規制するか、利用するか。スコルジャ政権の違和感とヘグモ政権の論理【戦術分析コラム】
●机上の空論…。浦和レッズが出した結論は…
今季が開幕したときの浦和は、どこか静的な立ち位置を守り続けているように見えた。相手が[4-4-2]で構えているとすると、インサイドハーフは相手の中盤の背中に構えさせる形をスタートとしていた。 理論上ではセンターバックとアンカーのトリオによって、相手のファーストラインを超えていきたい。しかし、それが実現することもあれば、机上の空論になることもある。ときにはインサイドハーフが降りてくることも必要で、インサイドハーフが降りたことでできたエリアにはセンターフォワードが降りてくることもまた必要になってくる。いつだって現実は厳しく、正解でもある。 机上の空論とピッチで起きている現実を収斂させながら、浦和の出した結論は[4-2-3-1]と[4-3-3]をミックスさせるような形だった。両者の最も異なる差はセンターフォワードが降りるプレーをする必要があるか否かとなるだろう。ブライアン・リンセンのように相手の裏に飛び出すことを得意としている場合は、ポストの仕事をトップ下の選手に任せたほうが良い。ポストの仕事をこなせるチアゴ・サンタナの場合はトップ下を置かなくても大丈夫で、個性に合わせた調整が必要になっている。 解放という言葉もひとつのキーとなっている。大外に位置するウイングが内側に移動するためには、他の誰かが大外に移動してくる必要がある。サミュエル・グスタフソンがアンカーの位置から移動するなら、インサイドハーフやセントラルハーフがグスタフソンの開けた位置を埋める必要がある。 誰かが自分のプレーエリアを補完してくれるからこそ、ボールを受けるため、もしくは味方のために移動をすることができる。この関係性がなければ、ピッチはカオスな状態となり、ボール保持者は選択肢がないなかでのプレーとなってしまうだろう。
●グスタフソンは最高のお手本。ウイングに求められる多彩な仕事とは…
時間とスペースを得るために、周りの選手の立ち位置を利用することもできるようになっている。ポジショナルプレーの原則では、隣り合う選手は同じレーンにいてはいけないが、あえて同じレーンに立ち位置をとることで、味方をフリーにする、自分がフリーになることを理解して立ち位置を変化させるプレーも増えてきている。 スコルジャ時代から続くボール保持へのあくなき挑戦は、個々の選手のレベルアップとボールを持っている選手の振る舞いにも助けられる形となっている。最高のお手本であるグスタフソンと、いなくなってしまったけれど、オラ・ソルバッケンの存在が大きかったのではないだろうか。 ボール周辺の状況を見ながら適切なサポートを行い、ボールの行方を指示するグスタフソンは周りに時間とスペースを配り続けている。ボール保持者のプレッシングに出た相手の背中でボールを受け、フリーの状況から相手をぎりぎりまで引き付けるプレーは、周りの選手に大きな影響を与えている。 ウイングの質といえば突破のイメージがあるが、ソルバッケンは相手を背負うキープで味方の攻め上がりの時間を稼いだり、ハイボールの的になってボールを守ったり、カットインによって相手の守備の基準点を混乱させたりと、ウイングがすべきプレーをたくさん残してくれた。ウイングの仕事は突破してクロスだけではないことを証明したソルバッケンのプレーは、現代のウイングに必要な仕事が多彩になってきていることを示している。