「小6で親元から離れる覚悟をもって」平野美宇 パリ五輪で銀メダル獲得までの心の成長【母・真理子が語る】
── オリンピック前も連絡はありましたか? 真理子さん:東京オリンピックの選考会のときは、まったく連絡がないときがありました。ようやく連絡がきたときは、本当にギリギリで、追いつめられた精神状態になっていて…。状況を客観的にとらえられず、自分の気持ちをコントロールできていなかったんだと思います。そのため団体戦には出場できたものの、シングルスの代表枠を獲得できなかったのかなとも感じています。 でも、その経験が美宇を大きく成長させてくれました。「シングルスに出場するにはどうしたらいいんだろう」と徹底的に考え、「もっと心を強くしないといけない」という答えにたどり着いたようです。自分の弱さを自分で認めることは、簡単なようで一番難しいことだと思います。東京オリンピックを経て急に大人になり、目に見えてしっかりとするようになりました。
■パリオリンピックで垣間見えた娘の成長 ── パリオリンピックの選考会のときはどんな様子でしたか? 真理子さん:とても前向きでしたね。代表を勝ち取るのは平坦な道のりではありません。でも、自分の気持ちにきちんと向き合っている印象でした。大事な試合前も「うまくいかないから、叱咤激励してほしい」と連絡をしてきました。自分の状況を客観的に把握し、気持ちが混乱する前にコントロールできるよう、先手を打てるようになっていました。
パリオリンピックの選考が佳境に入るころ、私の叱咤激励も徐々に必要なくなってきました。本人はギリギリのところで戦っていたから、とてもつらいはずなのに「行ってくるね、楽しんでくるね」と、家族のグループLINEにメッセージが届くんです。負けたときも「今回はこういうところがダメだったから、次は見直して頑張る」と、いつも前を向いていました。だから、「今回はどんな結果でも、美宇に心から拍手を贈ろう」と決めていました。
── 実際にパリオリンピックのシングルス代表に選ばれたときはいかがでしたか? 真理子さん:なんといっても美宇の心の成長がうれしかったです。家族みんなで支え、一緒に戦ってきたつもりだったので、家族みんなで代表枠を手にした気がしました。代表に選ばれるまで弱音を吐かなった美宇が、代表に選ばれてから「支えてくれてありがとう、苦しかったー!」と、家族に本音のメッセージを伝えてくれました。私たち家族も彼女の力になれているのだと感じて、とてもうれしく思いました。