すごく幸せです…。家賃2万円のボロアパートで暮らす34歳女性の“ただならぬ生活”から見えてくる「頑張らずに早期退職・FIRE」を実現する方法
理子さんが「FIRE生活」を選んだ切実な事情
「智也さん、彼女をどう思いますか?」 「なんていうか、平和というか、穏やかというか、〝精神的に豊か〟ってこういう感じなのかなぁって思うな。なんか憧れちゃうけど、逆に自分がこの暮らしをずっとできるかと聞かれたらできないかも……」 「そうですよね。あまり一般的な暮らしとは言えませんね」 「言い方悪いかもしれないけれど、仙人みたいじゃない? 欲とかないのかな?」 「理子さん、昔はすごくよく働く方だったんです」 「へえ、なんか意外だなぁ」 のんびりとした、穏やかな様子の彼女がバリバリと働いているというのは、想像がつかなかった。 「彼女はとにかく周りの期待に応える方でした。いつだって人からどう思われるかを気にしていて、親の目や先生の目を気にして進路を選び、周りが立派と言う会社に就職し、会社でも上司や同僚からの視線ばかり気にしていました。幸い能力が高い方だったので、それでもうまくやれていたのですが、そんなふうに誰かの期待に応え続ける日々を忙しく駆け抜ける中で、彼女は気づいてしまったんです。〝わたし、なんのために生きてるんだろう?〟って」 なんだかわかる気がする。親の反応や、世間体を気にして就職活動をしていた頃の記憶が蘇った。 「そうして理子さんはある日プツンと糸が切れたように、会社に行けなくなってしまい、退職をしました。元から全然お金を使わない人だったので、ハードワークの甲斐もあり、たくさんのお金が手元に残っていました。そのほとんど全てを高配当株に回して、地方都市の外れに引っ越してFIRE生活をしています」 「それはまたすごいな。でもさ、こんな暮らしって虚しくならないのかな?」 「では、実際に彼女の心情を聞いてみましょうか」 彼女の心の声が、自分のことのように聞こえてきた。
家賃2万円のボロアパート暮らしでも幸せな理由
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 心穏やかに、自分のために過ごしたい。私の願いはただそれだけだった。 贅沢な日々はいらない。特別な出来事もいらない。心の豊かさと誰にも邪魔をされない自由があれば、それでよかった。キラキラ輝く宝飾品も、おしゃれな服も、上司からの評価も、親からの称賛も、シャンパンも、イケメンも、別にいらなかった。 今の自分の生活が好きだ。 誰かの目を気にすることなく、好きに生きている。起きる時間も、食べるものも、日々の行動も、誰だって私を縛ることはできない。お金はたくさん使えないけれど、逆に言えば、お金さえ使わなければ、いつまでもこの生活を続けることができる。 もちろん、もっとお金があれば生活は快適だろう。私の家にはエアコンがない。 夏はうだるように暑い。窓を開けて、扇風機をつけて、どこかでもらってきた保冷剤を使ったり、凍らせたペットボトルを部屋中に置いたりして暑さを凌いでいる。 冬は室内でも凍えてしまう。でも、寒さの方はまだマシだ。たくさん布団を重ねて、湯たんぽを用意すれば、寝床だけは最高に暖かい幸せな空間になる。 駅から20分も歩く、家賃2万円(共益費込)のボロアパートの部屋は狭いし、お風呂だってユニットバスな上にすごく小さい。 それでも私は、すごく幸せだった。親は私のことを心配するし、かつての同級生や同僚が「彼女は変になった」などと言うけれど、それももう気にならなくなった。私は、私の人生を取り戻したのだ。 私がとりわけ好きな時間は、散歩をしているときだ。ゆっくりと歩くだけで、色々なことを知ることができる。道端に咲いた花をキレイだと思ったら、立ち止まって、よく愛でて、それがどんな花なのか調べてみる。そんなことをしているだけで、時間なんてすぐに経ってしまう。 道端に咲いている花を見るために立ち止まる生活。 それこそが、私の求めているものだった。昔の自分であれば、そんなことは時間の無駄だと感じていただろう。というか、花が咲いていることにすら気づかなかったかもしれない。でも私は、こんな時間が本当に豊かだと感じる。 何もない暮らしではある。でも、ただただ自由がある。私は、それが何よりも嬉しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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