「築地から豊洲へ」移転決定から17年 新市場がオープン
豊洲移転の延期発表、盛り土問題も発覚
開場日が決まり、豊洲移転に向けて準備が進められる中、流れが変わったのは2016年8月。東京都知事選で勝利した小池百合子知事が誕生してからだ。小池知事は市場移転が約2か月後に迫る8月31日、「安全性への懸念」「巨額かつ不透明な費用の増加」「情報公開の不足」など3点の疑問を理由に、移転の延期を発表した。 翌9月には、土壌汚染対策として豊洲市場の建物下に行うはずの盛り土がなされていなかったことを公表。都はそれまで都議会に対して盛り土を行ったと虚偽の説明をしていたことになり、批判を浴びた。小池知事は土壌汚染対策を検討する専門家会議を再招集し、合わせて主に経済持続性の観点から移転を検証する市場問題プロジェクトチーム(PT)を設置した。 2017年1月の専門家会議では、前年11月に行われた豊洲市場の地下水モニタリング調査で、環境基準79倍というベンゼンをはじめ、複数地点で環境基準を超える有害物質が検出されたことを発表。市場関係者からは「無害化の約束が果たされていない」など憤りの声も聞かれた。 専門家会議は、2016年10月から2017年6月にかけて計7回の会合を開いた。その中で、「豊洲市場の地下部分の完全な無害化には長い時間がかかる。すなわち短期間での無害化は困難だが、地上部分については科学的に安全が保たれている」との見解を示した。最後の会合で、主要建物下の床面をコンクリートで遮蔽するなどの追加対策工事を都に提示。都はこれを採用した。
市場問題PTは豊洲の赤字試算を問題視
市場問題PTが問題視したのは、開場後の豊洲市場の収支が赤字見込みだった点だ。都の試算によると、減価償却費を含めて年間で約92億円の赤字の見通しだった。市場問題PTは、経費節減や使用料収入の値上げでこの赤字を補うのは不可能だと指摘。建設費や土壌汚染対策費を含め約6000億円に上る豊洲市場の事業費は「資金回収方策なき、資金の逐次投入による経営」と指摘した。 また同PTでは、築地市場の再整備案も検討。営業しながら段階的に改修を進めた場合、工期は都庁内の手続きを含めて15年、事業費は1209億円と見積もった。2017年6月には豊洲市場への移転案と、この築地改修案の両案を併記した報告書をまとめ、小池知事に提出した。