「築地から豊洲へ」移転決定から17年 新市場がオープン
小池知事が表明した「豊洲・築地」両立案
豊洲へ移転するのか、それとも築地にとどまるのか。小池知事が判断を示したのは、自身が率いた地域政党「都民ファーストの会」の躍進を期した東京都議会選挙の1か月半前の2017年6月20日のことだった。 小池知事は「築地は守る、豊洲を活かす」と述べ、豊洲と築地を両立させる方針を発表した。具体的には、豊洲には中央卸売市場として移転するとともに、築地跡地は更地にして東京五輪で活用した後、5年後をめどに市場機能を持つ「食のテーマパーク」として再開発するというものだった。「単に豊洲へ移るだけでは赤字が継続する。それを打破するため、築地の再整備と豊洲の有効活用、機能強化で収入を得る。ダブルのプラスに持っていきたい」。豊洲と築地の両方で収益を得て、問題視された豊洲市場の赤字問題を解決する狙いがあると説明した。 これに対し、築地市場協会の伊藤裕康会長は「市場は物と人、情報が集まり、その交流の中で運営されるもの。これだけの近距離で2つ市場というのはあり得ない」と困惑の表情を見せた。 なお「食のテーマパーク」構想は、豊洲市場の商業・観光施設「千客万来」の整備計画に飛び火した。同施設の運営会社である万葉倶楽部(神奈川県小田原市)が、近くに似たような施設ができれば採算が取れないと反発。撤退も視野に入れるとして施設の整備計画はストップした。小池知事は2018年5月、万葉倶楽部側に「気配りが足りなかった」などと陳謝。同社は翻意し、同施設を東京五輪後に着工すると表明した。
追加の土壌汚染対策工事を経て「安全宣言」
豊洲市場では専門家会議が提案した土壌汚染対策に則り、追加工事が行われた。2018年7月に全工事が終了し、同会議は安全性が確保されたとの評価を発表した。これを受け、小池知事は7月31日、「豊洲市場は産地出荷者、市場関係者、消費者含めすべての関係者に安心して利用していただける市場、すなわち安全・安心な市場として開場する条件を整えることが出来た」と述べ、「安全宣言」を発表した。 築地再開発については、外部有識者で構成する築地再開発検討会議で開発の方向性などを話し合い、2018年5月に報告書をまとめた。ただその内容は、浜離宮恩賜庭園など周辺との連携や築地ブランドの活用といった大筋の提案が中心で、築地再開発でどのような施設を作るかなど具体的な中身には踏み込んでいない。小池知事が示した「食のテーマパーク」構想など築地再開発の方向性は不透明なままだ。