スルガ銀行・岡野前会長、シェアハウスリスク認識しつつ問題放置
シェアハウス関連の不正融資問題を受けてスルガ銀行会長を辞任した岡野光喜氏が、シェアハウスビジネスのリスクを認識し、行内からも問題が指摘されていたにもかかわらず対応せず、問題を放置したことが同行の第三者委員会(委員長、中村直人弁護士)の調査で明らかになった。第三者委員会は、岡野前会長に善管注意義務違反があったと指摘しているが、岡野前会長がなぜリスクを認識していながら対応をしなかったのかについては明らかにしていない。
第三者委員会の調査報告書によると、スルガ銀行はシェアハウス事業者のサクトインベストメントパートナーズ株式会社の投資案件にも融資を行っていたが、同社は2017年2月に差し押さえを受けるなどしてシェアハウスの運営を行うことが出来なくなった。 このため同行は2017年4月からサクトインベストメントパートナーズの問題に対応する取締役らによる会議を定期的に開催するようになり、この中で審査部門からシェアハウスのリスクや問題が指摘されたという。 しかし、岡野氏は「シェアハウスは経営判断でやってきた」との意向を示し、会社に著しい損害を与える恐れのある重大な問題が発生していることを認知したにもかかわらず十分な調査をせず、対策も立てなかったうえ、監査役に報告することなく、取締役会にも上程しなかった。その結果、スルガ銀行内でサクトインベストメントパートナーズの問題はうやむやとなってしまったという。 また、2017年10月の経営会議で融資の基準見直しが行われたにもかかわらず、その後の社内会議で融資基準の改定が覆されるということがあり、その際にも岡野氏は会長として是正に乗り出すべきだったのに、なんら対応をしなかったという。 第三者委員会によると、スルガ銀行は経営層と現場の情報が断絶していて、取締役以上の経営層には問題のある情報は伝えられない仕組みになっていた。現場では、営業を強力に推進していた岡野前会長の弟で、2016年に副社長で亡くなった岡野喜之助氏から指示を受けた営業トップが権勢をふるい、営業の現場では恫喝や暴力、叱責などのパワハラが日常的に行われてきたという。 そうした中で審査書類の改ざんや偽造など数々の不正行為が行われ、多くの職員が不正に関与し、不正を認識していたり疑いをもっていたにもかかわらず融資手続きを行っていた。調査報告書は「行員が不正行為等を、個人的な利得のために行ったと認められる証跡は見つかっていない」とも記しており、中村委員長は、不正は個人的な行為で行われたのではなく、スルガ銀行が組織的に行っていたものとの認識を示した。