災害支援、にぎわい作り……自治体との提携も続々、コロナ禍を経たキッチンカーの「いま」を聞く
災害対策における「キッチンカー」の存在感が増している。機動力や調理のプロの手を生かし、災害時に避難所での迅速な食事提供が可能なことから、事業者団体と自治体との提携が続々と結ばれているのだ。3月には滋賀県、6月には徳島県が、関係する地元の団体と協定を締結した。 【画像】災害支援で提供した食事など(計7枚) キッチンカーと空きスペースのマッチング事業を展開するMellow(東京都千代田区)は、2019年からこうした災害支援に取り組んでいる。コロナ禍において新規の参入が増えたといわれるキッチンカーだが、災害対策の現場をはじめ、単なる「数」以上にその活躍シーンは広がりつつあるようだ。代表の石澤正芳氏に話を聞いた。
全国で3000台が登録、ITにも注力
Mellowはキッチンカー事業を中心に、店舗型モビリティと空きスペースのマッチングを行うプラットフォーム「SHOP STOP」を2016年から展開する。現在では約3000台のキッチンカー事業者が登録しており、首都圏の大手デベロッパーやゼネコン、自治体を主な対象として、1000を超える空きスペースと契約を結ぶ。売り上げの15%を同社が出店料として受け取り、うち5%程度を土地のオーナーが受け取るというシステムだ。 出店場所の紹介とあわせて、月間52万食(2023年12月時点)という購買データをもとに、立ち上げのサポートや新規参入者への現場指導といった経営支援を行う。売り上げや出店スケジュールはITツールで一元管理しており、店舗ユーザー向けの出店情報アプリ「SHOP STOP」も提供するなど、デジタルの活用にも注力する。
コロナ禍を経た「イメージの変化」
キッチンカー事業者は、コロナ禍によって新規参入が増えたといわれる。Mellowの事業規模も、2019年12月末から2023年12月にかけて、トラック数は4倍に、契約スペース数は6倍に伸びた。オフィス街から人が減れば住宅街に移動できるといった移動型店舗の機動力や、「三密」を回避して食事を購入できる点が強みとなった。 しかし、石澤氏は「店舗を持てない人たち」「屋台文化の派生」といったキッチンカーのイメージが変化した感覚の方が大きいと話す。「移動型店舗のメリットが注目されるようになった。キッチンカーの収益化は難しいと言われるが、飲食店の廃業率はどこも高く、結局はその店舗次第。『戦略的に運営する』選択肢がありなんだ、という気づきがあったのでは」。