KDDIが通信品質で国内首位へ、“デュアル5G戦略”で手にした大きな成果、躍進を遂げた要因はどこにあったのか
西村氏は「サブ6のみでエリアをカバーしようとすると、どうしても薄く広くなってしまい、速度低下や品質劣化につながる可能性がある」と分析する。一方、KDDIの戦略では4G転用周波数で基盤を作り、その上にサブ6を効率的に展開できるため、より高品質なエリア構築ができたというのだ。 ■通信品質向上がもたらす体験の変化 通信品質の向上は、ユーザーの日常的なスマートフォン利用にどのような変化をもたらすのか。KDDIは特に動画視聴とオンラインゲームの体験向上を強調している。
サブ6の展開が進んだことで、20Mbps以上の通信速度を確保できるエリアが95%まで拡大した。外出先でも高画質な動画の読み込みが早くなり、動画ストリーミングサービスを利用しやすくなるということだ。 オンラインゲームなどで重要となる通信の応答速度(レイテンシー)も改善されている。KDDIの説明では、30ミリ秒以下のレイテンシーを確保できるエリアが92%に達したという。 KDDIはこれらの改善効果を、実機によるデモンストレーションで示した。動画のダウンロード時間の短縮や、ソーシャルSNSのゲームのキャラクターの動きがよりスムーズになる様子が確認できた。
今後、Massive MIMO(マッシブマイモ)と呼ばれる技術の導入や、保有する2つのSub6ブロックを同時に利用できる小型装置の展開を計画しているとKDDIは説明している。 MIMOは、Multiple-Input Multiple-Output(多入力多出力)の略で、多数のアンテナを使用して同時に複数の通信を行う技術。従来の基地局よりも格段に多くのアンテナを使用することで、通信容量の増大と通信品質の向上を実現する。甲子園球場での実験では、Massive MIMOの導入により通信速度が約1.6倍に向上した。
また、KDDIが保有する2つのサブ6ブロックを同時に利用できる新たな装置の開発も進んでいる。サムスン電子製のMassive MIMO装置で、限られたスペースでより高速な通信が可能になると期待される。前田氏は「来年度以降、さらに高速なネットワークをお届けしたい」と話す。 一方で、こうした通信品質の向上をユーザーに実感してもらうことの難しさも課題として挙げられた。前田氏は「つながることが当たり前になっている中で、品質向上をどう伝えていくかは課題」と認めている。