ふるさと納税「ポイント禁止」のなぜ? “業者の中抜き”だけじゃなかった…憂慮すべき「2つの問題」とは
ふるさと納税が抱える「経費」の問題
第一の「経費」の問題とはどのようなことか。黒瀧税理士は、自治体にとって、寄付金を受け取っても寄付者への返礼品などの経費がかさめば、メリットが激減してしまうと指摘する。 黒瀧税理士:「自治体が多くの寄付を集めるには、より豪華で魅力的な返礼品を用意することが最も効果的です。したがって、必然的にいわゆる『返礼品競争』が発生します。 返礼品の魅力は、よほどのことがない限り『お得感』つまり『市場価格と2000円との差額』に左右されます。したがって、一定の限界を設けないとかえって『返礼品競争』により自治体が消耗し、損失を被ってしまうリスクがあります。 また、自治体が独力でPRするには限度があるので、『楽天』『さとふる』『ふるさとチョイス』など仲介業者の利用も事実上不可欠です。そのコストがかさんでしまうリスクもあります。 これらを踏まえ、紆余曲折を経た結果、返礼品競争の過熱を防ぎ、かつ経費を抑えるために現在は以下の規制が設けられています。 ・返礼品は『地場産品』に限ること(地場産品基準) ・返礼品の仕入れ額は寄付額の30%以内に抑えること(30%ルール) ・経費の総額は寄付額の50%以内に抑えること(50%ルール) 『経費の総額』には、いわゆる『ワンストップ特例』や寄附金受領証の発行の事務にかかる費用や、仲介業者への手数料なども含まれます。 経費率が寄付額の50%を超えてしまうとさすがに本末転倒だろうということです」 また、「地場産品基準」については、特に近年、大阪府泉佐野市の『熟成肉』と『精米』が問題視された。2023年10月から、あたかも狙い撃ちのように『当該地方団体が属する都道府県の区域内において生産されたものを原材料とするものに限る』と明文で規制されるに至っている。 しかし、加工品の場合、必ずしも原材料のすべてを自治体の区域内ないしは同じ都道府県内から調達しているわけではないだろう。泉佐野市のケースがNGとされた決定的な理由は何か。 黒瀧税理士:「『地場産品基準』は、ごく大雑把にいえば、その自治体の名物でもなく、縁もゆかりもない品は認められないということです。 やや紛らわしいかもしれませんが、たとえば、岩手県遠野市の『ジンギスカンセット』は輸入羊肉を使用していても『地場産品基準』をみたしセーフです。遠野市では古くからジンギスカンが名物として内外に認知され、市内にジンギスカンを提供する飲食店や、羊肉を加工し販売する精肉店が多いという実情があります。 泉佐野市の『熟成肉』と『精米』については、このような事情が認められなかったということです」 さらに今回発表された新しい規制は、仲介業者の『ポイント制』を禁止するものである。 黒瀧税理士:「寄付者がふるさと納税を利用して『ポイント』を獲得したら、次のふるさと納税などで使用できます。その場合、ポイント相当額は、仲介業者の『持ち出し』となり、結局、自治体から受け取る『手数料』のなかから賄わざるを得ません。 つまり、ポイント制が、めぐりめぐって『仲介業者の手数料』への転嫁という形で自治体の経費を増大させているという問題意識があります」