驚きの品揃え「トライアル」「久世福商店」が展開する新業態
こだわりの“和の食品”が人気の高級店「久世福商店」が進める“お得戦略”と“新たな需要発掘”
一方、「テラスモール湘南」(神奈川・藤沢市)内にあるのが、全国に159店舗を展開する「久世福商店」。店内には、こだわりの和の食品が約1000種類も並び、メーカーと共同開発したオリジナル商品が売り。3種類の柑橘類と藻塩を使った「塩ポン酢」(480円)は、一般的なポン酢の倍の値段。ご飯のお供「土佐の赤かつお」(799円)は、高知の老舗鮮魚店が秘伝のタレで炊き上げた逸品。品質重視の高級路線ながら付加価値のある商品が人気で、中には一度に1万円近く買う人も。売り上げの4分の1を占めるのがギフト需要で、専用のカウンターもある。
久世福商店は物価高を受け、2年前に値上げを実施したが、その影響で客離れが起きてしまった。そこで去年12月、運営会社「サンクゼール」の久世良太社長は、値下げを実施。これまでに91品目、平均15パーセント値下げした。久世さんは、「今まで以上に価格に注目するのは当然のこと。“価値”に目がいくように新しい提案を、こういう局面だからこそしっかりやらなければならない」と話す。危機感を抱く久世さんは、新たな価値を提案できる新店舗の開発に乗り出した。
それは、JR町田駅と直結している「町田マルイ」に、オープンさせる“都市型小型店”。 売り場面積は従来店の約3分の1で、店の内装を明るく一新。久世福になじみがなかった人にも気軽に立ち寄ってもらうのが狙いだ。 物価高で客離れが起きた高級店にとって、今回の小型店開発は社運をかけた重要案件。 1年半前からプロジェクトチームをつくっていた。
商品開発リーダーの小倉未帆さん(32)は、新たな客層をつかむため、これまでにない商品の開発に取り組んでいた。 小倉さんが訪ねたのは、宮崎市内にある「平和食品工業」。8年前から、久世福のオリジナル商品を共同開発している。
製造しているメイン商品は、宮崎名物「鶏の炭火焼き」。専用の大型七輪を使い、熟練の職人たちが豪快に手焼きすることで肉のうまみが凝縮され、香ばしい味わいに。 すでに久世福で販売している商品だが、小倉さんは選別の際に網の目からこぼれ落ちる小さな鶏肉に目をつけていた。 廃棄していた部分を使って「もったいない商品」をつくれないかと打診すると、メーカー側も大喜び。これまで、年間2トンぐらい廃棄していたという。「若い世代は(サステナブルに)意識が高い人も多くいると思う」と小倉さん。これなら、従来品より価格を抑えられるため、お客さんもお試し感覚で手に取ってくれそうだ。