【矯正歯科医師が解説】大人と子どもの歯列矯正で治療法・装置・費用はどう変わる?
小児矯正と成人矯正は使う装置も違う? ワイヤー・マウスピースなど装置の種類について
編集部: 大人と子ども(1期治療)の歯列矯正は、治療の方法や装置も違うのでしょうか? 渋谷先生: 子どもの1期治療では主に取り外し式の装置を使用します。顎の成長をうながす装置なので、夜寝るときだけの装着でも一定の効果が得られます。これに対し、すべての歯が永久歯に生えかわった2期治療と大人の矯正治療は治療法や使用する装置がほぼ同じです。代表的な装置には固定式のマルチブラケット装置(ワイヤー矯正)や、透明で取り外しができるマウスピース型矯正装置(マウスピース矯正)があります。 編集部: 子どもの1期治療で使用する代表的な装置を教えてください。 渋谷先生: 1つは「拡大床」という装置です。取り外しができる装置で中心にネジがついており、そのネジを回すと少しずつ顎の幅を広げる仕組みになっています。同じく取り外しができる装置では、既成のマウスピース型装置も代表的です。こちらは歯並びに影響するお口周りの筋肉や舌の動きを正常にして、歯並びを整える効果があります。
歯列矯正を始めるタイミング 歯並びは「子ども」のうちに治しておくべき? 大人は何歳まで治療ができる?
編集部: 歯列矯正は大人になってからではなく、子どものうちにはじめたほうがいいのでしょうか? 渋谷先生: これは歯科医師によっても意見が分かれます。技術のある先生の中には「大人からでも100点の状態にできるから」という理由で、子どもの矯正治療は必要ないと考える先生方がいらっしゃるのも確かです。ただ、先述のように大人の矯正治療は負担も大きいため、装置が取り外し式で負担も少ないという点で子どもの歯列矯正(1期治療)にはメリットが多いと思います。 編集部: 子どもの歯列矯正(1期治療)は、「治療による負担が少ない」という点がポイントなのですね。 渋谷先生: はい。また、永久歯を100点の歯並びにしたい場合に、1期治療から始めると抜歯の可能性が少なく、固定式の装置の期間(2期治療)も短くすむというメリットもあります。もし自分の子どもだったら、このようにできるだけ負担の少ない治療をプレゼントしてあげたいと思います。 編集部: そのほかに、子どものうちから歯列矯正を始めるメリットはありますか? 渋谷先生: 子どもは歯ブラシをうまく使えないことがあるので、凸凹が少なくなることで歯磨きがしやすくなり、むし歯や歯周病のリスクも低くなります。また、しっかり噛めるようになるのでご飯が食べやすくなり、身体の成長にも良い影響があると思います。 編集部: ちなみに、子どもの歯列矯正は何歳ごろから始めるのがよいのでしょうか? 渋谷先生: まずは、下の前歯の永久歯が生えてきた段階で一度矯正歯科で歯並びを相談してみることをおすすめします。顎の位置や歯と顎の大きさのバランスを診てもらえば、このままなにもしないとどういう歯並びになるかの予想を説明してもらえるでしょう。その歯並びがもし気にならないようであれば、とくに治療の必要はありません。反対に歯並びを改善したいのであれば、その原因に直接アプローチする方法や、その効果が一番発揮できるタイミングを提案してもらえると思います。 編集部: 大人の歯列矯正は、年齢に上限はありますか? 渋谷先生: 歯列矯正は基本的に年齢の上限がなく、顎の骨の状態や歯に問題がなければ何歳からでも治療は始められます。ただ、歯周病が原因で歯ぐきが下がっていると、歯の移動でもっと歯ぐきが下がる、あるいは歯ぐきの退縮により知覚過敏になることもあるため注意が必要です。また、骨粗しょう症のお薬を飲んでいる方は歯が動かないこともあるため、ケースによっては治療ができない場合もあります。 編集部: 最後に、読者へメッセージをお願いします。 渋谷先生: 子どもの歯列矯正は取り外し式の装置で負担が少ない一方で、装置をたまにしか使わないと効果が出にくく、せっかく治療を始めても歯並びが改善しないこともあります。子どもの歯列矯正の多くは保護者の希望により開始されますが、お子さん自身の意思で治療に取り組むことが一番重要です。また、矯正歯科医院を選ぶ際は、お子さんが納得して治療に取り組めるよう、コミュニケーションを大事にしているかどうかもチェックしておきましょう。