番組にAIアナウンサー起用へ 琉球朝日放送がNECと協力、来年1月から 多言語翻訳も
NECと琉球朝日放送（那覇市）は4日、AI（人工知能）アナウンサーを起用した番組の放送を来年1月から開始すると発表した。AIが原稿を音声に変換するのに合わせて、アバターのアナウンサーが自然な形で口元を動かし、原稿を読み上げる。80カ国以上の言語への翻訳も可能で、人手不足の解消に加え、外国人向けの新たなコンテンツ提供も目指す。今年8月には、NHKのラジオ国際放送で中国籍スタッフによる不適切発言が大きな問題になったこともあり、放送リスクの観点からもAIアナウンサーの需要が拡大しそうだ。 AIアナウンサーは、沖縄県の令和6年度沖縄DX促進支援事業補助金（約1000万円）を活用した琉球朝日放送のデジタル化事業の一環。NECと協力し、AIを用いたアナウンス映像を生成できる番組制作システムを構築する。AIアナウンサーの映像生成には、韓国のベンチャー企業「ディープブレインAI」のAIアバター技術を活用した。 まずは地上波の放送やインターネットで配信するニュース、天気予報などの番組にAIアナウンサーを起用する。翻訳機能があることから、今後は訪日外国人に向けた多言語対応ニュースや災害情報、観光情報などの発信への応用を想定している。 NECの担当者によると、ニュース番組でAIが原稿を音声に変換して放送しているケースはあるが、アナウンサーの映像の口元と連動してAIが原稿を読み上げるものは珍しいという。「地方ではアナウンサーや制作スタッフなど専門人材の人手不足が課題となっており、翻訳も可能なAIアナウンサーを活用すれば、1人で複数の仕事をこなせるため、課題解決に貢献できる」（担当者）と強調する。 NHKのラジオ国際放送で中国籍のスタッフが尖閣諸島（沖縄県石垣市）を「中国の領土」などと発言した問題以降、各放送局は生放送中のリスク管理に力を入れている。NECは、AIアナウンサーの需要が高まるとみており、琉球朝日放送で実績を作ることで、幅広い放送メディアへの導入拡大を見込んでいる。（西村利也）
