落語会を昼夜ラジオで生放送、ABC朝日放送ラジオ戸谷公一プロデューサーに聞く
桂ざこば、桂文珍、月亭八方といった大御所落語家が並んで写る「ABCラジオ上方落語をきく会」のポスターを大阪の街で見かけた。会場は役者あこがれの梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ。聞けば約60年前に始まった歴史のある落語会で、開催される2月1日は昼夜を通しで生中継するという。長年にわたり、この会を取り仕切る大阪のABC朝日放送ラジオプロデューサー、戸谷公一さん(45)に意気込みなどを聞いてみた。
歴史ある会を担当、ほんまにプレッシャー
「歴史ある会なので、ほんまにプレッシャーなんです」と戸谷さんが語るように、この会が始まったのは1955年12月。53年に2代目桂春團治が亡くなり、大看板を失った上方落語界は会派が分かれ、別々の劇場で公演されていたため交流が全くなかったという。「分かれた会派の顔をそろえ切磋琢磨させる環境作りを」という思いで、当時同局社員だった澤田隆治さん(80)らが企画し始まった。澤田さんは後にテレビ番組「てなもんや三度笠」などをヒットさせ、番組制作会社、東阪企画を設立した。 一方、戸谷さんは三重県四日市市出身で少年時代からの落語好き。だが、場所柄それを生で味わう機会は少なかった。地元で聴ける名古屋の東海ラジオ「なごやか寄席」、ABCラジオ「土曜名人会」といった番組を聴きながら落語に親しみ、大学では落語研究会(落研)に所属した。「もちろん生の落語を聴くのがいいのですが、僕にとっての落語はラジオ」。耳で聴きながら想像し、心地よく聴けた。 そんな落語への思い入れを胸に、入社3年目から番組制作などにかかわり「日曜落語 ~なみはや亭~」などを担当。97年から同会にも大きくかかわった。「先輩から引き継ぐ時『無理せんでええで』と言われ『やっとかなあかんと思ってやるんやったらやめときなさい』と言われましたね」。 歴史とともに、「先人たちが情熱だけでやってきた」という同会。「やり尽くしている」感もあったが、自身の担当番組をはじめ、同局の人気テレビ番組の構成などを手掛けた放送作家、日沢伸哉さんとともに頑張ってきた。だが09年10月、日沢さんがクモ膜下出血のため54歳で死去。同会もしばらく行われなかった。その時は「心が折れた」と当時を振り返る。