「自由度の高さが魅力だった」青春18きっぷ、JRが《大幅改定》に踏み切った「致し方ない理由」
気になる「3日間用」の有用性
今回の改定でいろいろ気になる点はあるが、注目したいのは3日間用の価格である。 先述したように3日間用は1万円なので、1日分に直すと単純計算で3333円になる。同じく5日間用を1日分に直すと2410円なので、1日単位だと3日間用は5日間用よりも高いことがわかる。 では、3日間用を1日単位で考えると、どこまで行けば元が取れるのだろうか。片道3333円以上の区間だと東京~静岡間(3410円)、東京~いわき間(3740円)、大阪~倉敷間(3410円)、大阪~名古屋(3410円)となる。 さらに、3日間用を2日で利用すると、1日分は5000円になる。東京~豊橋間の運賃は5170円、大阪~広島間の運賃は5720円なので元が取れる。在来線での所要時間は東京~豊橋間が約5時間、大阪~広島間は約6時間だ。大阪~広島間で考えると、繁忙期の高速バスの運賃と同等といったところか。 いずれにせよ、3日間用を有効的に使おうと思うと、より緻密な計画が必要になってくるだろう。
少しでも駅員の業務負担を減らしたい
なぜ、JRグループは青春18きっぷの改定に踏み切ったのか。ここでJRのメリットを考えてみたい。 ひとつは青春18きっぷの転売防止が目的だと考えられる。これまで金券ショップでも青春18きっぷが売られていることはあったが、実はJRは公式として転売を一切許可していない(10月22日付神戸新聞)。 その点、今回の改定で有効期間に縛りを設けたことにより、転売は難しくなるだろう。近年は「転売ヤー」をはじめとする転売行為が社会問題になりつつあることから、JRも看過できなかったのかもしれない。 二つ目のメリットは、有人改札の利用を抑えられるという点だ。近年、インバウンド客の増加もあり、駅改札での駅員に対する負担は増しているように感じる。また、今後は少子高齢化により、駅員の確保自体も難しくなるだろう。 「少しでも駅員の業務負担を減らしたい」と考えるJR。そこで、有人改札にしか対応していなかった青春18きっぷを、自動改札機でも利用可能にしたというのは、実に納得がいく話だ。 ただ、SNSを見てみると、「きっぷにこだわる必要はなく、スマホを利用したシステムを採用すれば、従来のメリットと転売防止を両立できたのでは」として、今回の改定を《改悪》だとする意見もあった。しかし、この指摘にはいささか問題点がある。 というのも、これからの年末年始をはじめ旅行シーズンを迎えると、青春18きっぷを片手に持った高齢者の姿が散見されるようになる。おそらく、スマホの操作に慣れていない高齢者は少なくないのではないか。事実、NTTドコモモバイル研究所によると、70代の約6割が「スマホをうまく使いこなせていないと実感」と回答している。 高齢者の利用も考慮すると、やはり従来の紙のきっぷが望ましいのではないか。そのように考えると、筆者は今回のJRの改定は致し方ないように思えてくる。
新田 浩之(フリーライター)