G倒決勝2ランで鮮烈デビューの阪神新外国人ソラーテは救世主となるのか?
実は昨年、ブルージェイズにいたソラーテは、打率こそ.241だったが、前半だけで16本塁打を放ち、本塁打はキャリア最多を更新する勢いだった(キャリア最多はその前年の18本)。ところが後半は打率.175、1本塁打。出場試合数が30試合にとどまったのは、右脇腹を痛め、戦列を離れたことも一因だが、不安定な打撃もまた、彼の出場機会を奪った。 その昨年の前半と後半のデータについて、右打席、左打席に分けてまとめてみたが(表参照)、後半のサンプルが少ないこともあって、参考程度、という結果にしかならなかった。例えば、後半の左打席のオフスピード系に対するデータは13しかサンプルがない。一方で前半は49なので、かなり差がある。 それでもいくつか分かることがあり、右打席の場合、4シームの打球速、角度ともまずまず。昨日、本塁打を打ったのはスライダーだったが、ブレーキング系に対しては強い打球が打てる。その一方で、スプリット、チェンジアップ、フォークといったオフスピード系の球に弱いよう。好調だった昨季前半も、平均打球速度が83.7マイル(約135キロ)で、平均打球角度は5.3度。打球も上がらない。多少なら低めに外れていても手を出すというデータもあるので、落ちる球を持っている左投手は、対戦を有利に進められるのではないか。 通算で見ると、スイッチヒッターなので、体から逃げていくボールになるスライダーを追いかけることはないが、右打席の場合、体の近くに来るスライダーは、ボール球でも積極的に振ってくる。かといって必ずしも空振りが多いわけでもないので、低めに投げてファールを打たせ、有利なカウントに持ち込む、あるいは引っ掛けさせてゴロを打たせるという使い方が現実的か。昨日のホームランの打席も、捕手は低めに構えていたが、少し浮いたところをソラーテがすくった。 空振りが必要な場面なら、落ちる球が効果的。ボール球でも50%以上の確率で振ってくる。4シームを投げる場合、低めのボール球にはほとんど手を出してこないので、投げるなら高めのボール球が軸になる。50~60%の確率で手を出し、空振り確率は25%前後。ヒットになる確率も低い。 一方、左打席の場合は、右打席ほどボールのスライダーに手を出すわけではない。しかし、内角低めのボールになるスライダー、いわゆるバックフットの空振り確率は67.31%なので、この球を使える右投手は、優位に立てるはず。 4シームを投げるなら、外角は多少のボールでもヒットにする技術を持っているので、避けたいところ。かといって内角のボール球は見極めてくる。ボールに手を出す傾向が高いのは高目だが、ラインドライブになる比率も低くはないので、それなりにリスクはある。落ちる球も、ゾーン内は空振りを期待しにくい。投げるなら低めに外れる球が有効。60~70%の確率で手を出し、25%前後の確率で空振りする。ヒットになる率も低い。落ちる球をストライクゾーンに投げる必要はない。 さて以上、メジャーの投手が、彼に対して投げることの多かった4シーム、スライダー、落ちる球について簡単に傾向をたどってみたが、どちらかといえば右打席よりも左打席のほうが厄介。決め球には苦労しないが、左のときのほうが選球眼もいい。特に4シームをどこに投げるかという点では、しばらく手を焼く可能性もある。 もっとも、これらのデータはあくまでキャリアを通して見たものであり、昨季前半に16本塁打を放ちながら、後半、そして今季序盤はなぜ結果が出なかったのかという部分は、サンプルが少なく、掴みきれない。ソラーテが活躍できるかどうかは、そこに何が隠れているのか、ということになるかもしれない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)