ニッチジャンルなのに専門誌が乱立! 「麻雀漫画」の歴史をまとめた唯一無二の大作
本の中で「麻雀漫画史で最も重要な漫画家」として片山まさゆき先生を紹介しているのですが、片山先生はキャラクター造形のうまさや絵のポップさ、それから麻雀自体への深い理解といった多くの要素を併せ持っています。 代表作のひとつである『ぎゅわんぶらあ自己中心派』(講談社、『ヤングマガジン』連載)は、史上初の「メジャー雑誌で大ヒットした麻雀漫画」となりました。 ――先行研究が存在しないジャンルの調査と、それを通史としてまとめるという活動は今後も続けるんですか? V林田 実は、自分が書いたものに関してはどうしても粗が見えてしまって自信を持てないんです。それでも「この内容はここにしか書いていない」と思えば、自分をなんとか許せるんですよね。 それに、知らないことを調べるのはもはやライフワークとなっています。だから次もきっと、誰も手をつけていないジャンルのことを調べて書くと思います。 ――麻雀漫画に匹敵する、調べがいのあるテーマは見つかりましたか。 V林田 なかなかないのですが、今は古民家をありのままの姿で残した野外博物館である「民家園」が気になっています。日本各地に点々と存在して、マイナーどころは民俗建築学の本でも取り上げられていない。そういうのを掘り起こして魅力を紹介したいですね。 ●V林田(VHAYASHIDA)1982年生まれ、神奈川県川崎市高津区出身。東京都立大学人文学部社会福祉学科卒業後、古書店、時刻表編集、ライトノベル編集、業界新聞、ITベンチャーなどを経て、フリーライター。『SFマガジン』『本の雑誌』などで記事を執筆しているほか、漫画総合情報サイト『マンバ』上でノンジャンル漫画紹介コラム『珍しマンガ探訪記』を連載中。本書が商業出版での初単著となる。なお、麻雀漫画のオールタイムベストは作画・甲良幹二郎、原作・来賀友志の『麻雀蜃気楼』(竹書房) ■『麻雀漫画50年史』文学通信 2640円(税込)あるジャンルの漫画の歴史をまとめた本は、これまでにも『グルメ漫画50年史』(星海社新書)、『日本の医療マンガ50年史』(SCICUS)などがある。そこに新たな一冊が加わった。本書の特徴は、資料と関係者への取材を通して、客観的に通史を描き出したこと。70年代の黎明期から『哭きの竜』『スーパーヅガン』(いずれも竹書房)などのヒットが生まれた80年代などを経て、最終章では麻雀漫画の未来を考察する 取材・文/伊藤将史 撮影/榊 智朗