インドネシア新政権発足、成立の背景と今後の見通し ── 立命館大・本名純教授に聞く
インドネシアで20日、新政権が発足した。大統領に就任したジョコ・ウィドド氏(通称・ジョコウィ)はいままでにない庶民派のリーダーとして注目されている。新大統領は利権・汚職・談合体質のエリート政治文化に終止符を打てるのか。新政権成立の背景と今後の見通しについて、インドネシア政治が専門の立命館大学国際関係学部・本名純教授に話を聞いた。(河野嘉誠)
経済成長と広がる格差
ユドヨノ政権が2004年に誕生し、インドネシアは経済成長を謳歌した。2013年には国民1人あたりのGDPが、10年前と比べ3倍以上の3,509ドルになった。2億4800万人という世界第4位の人口を抱える巨大市場は海外企業にとっても魅力的だ。国際協力銀行「海外直接投資アンケート調査 (2013年)」では、日本企業の中長期的有望事業展開国として、インドネシアが第1位を獲得している。 主要20カ国・地域(G20)サミットの参加を果たすなど、インドネシアは国際社会における地位も向上させてきた。英・エコノミスト誌の「世界民主主義指数(2012年)」では、韓国・日本・台湾に次ぐアジア第4位の民主主義国家として位置づけられた。ユドヨノ政権下の10年間は、インドネシアに持続的な経済成長と民主主義の安定をもたらしたというのが国際社会の評価だ。 インドネシア政治を20年以上にわたり研究する立命館大学国際関係学部・本名純教授は、こうした国際社会の楽観論に対し警告を発する。「国際社会はインドネシアをイスラム国家が民主主義を成功させている例として安直に捉えている。ユドヨノ政権は安定を優先するあまり、改革に取り組まずにきた。その結果として、所得格差の増大や汚職の蔓延が深刻化したが、こうした問題は国際評価の美名によって覆い隠されてしまった」。 人口の46.1%が1日2ドル以下で生活するなど、インドネシアでは今なお貧富の差が厳然と存在する。アジア開発銀行の「Asian Development Outlook 2013」によると、所得分配の平等性を測るジニ係数も2008年の0.35から、2011年には.041まで上昇した。富める者はますます富むが、貧しき者は恩恵に浴せない。国際社会の歓声をよそに、貧困層の不満が新興大国を覆っていた。