<dogS ~ 仲良き事は美しき哉 ~>#4 犬の兄弟に特別な「情」はあるのか?
犬は、人と共に生きることで繁栄してきた。人と犬との絆は、間違いなく素敵だ。一方で、犬同士のコミュニケーションは、時に畏怖を感じるほど純粋なものに映る。人が安易に踏み込んではいけない聖域が、そこにあるように思えてならない。犬同士が織りなす美しき世界。カメラを手に、少しだけお邪魔した。【内村コースケ/フォトジャーナリスト】
前回のドイツの話では、森の中の湖でよその家の犬同士が自由に戯れる様子を取り上げた。一方で、「犬同士のコミュニケーション」の中には、兄弟姉妹の関わりもある。僕は比較的そのシーンを目にする機会に恵まれていると思うが、彼らに血の繋がった者への特別な感情があるかどうか、正直図りかねるものがある。
犬の兄弟とは?
犬は古来より多産・安産の象徴として神社でも大事にされているように、一度に数頭から10数頭の子を産む。だから、犬の兄弟という場合、人間とは違って同時に生まれた犬たちのことを指す場合が多い。もちろん、人間で一般的な歳の離れた兄弟もあるが、こちらは兄弟というよりも「親が同じ」という表現を使うことが多いと思う。
前者の兄弟は、日本ではほとんどの場合、生後3ヶ月を迎える頃までプリーダ―などの下で一緒に育ち、その後は別々の飼い主に引き取られる。つまり、ペットショップで犬を買った人は、その犬が兄弟と過ごしている所を見ることがないわけだ。そういう意味では、犬にとって兄弟とは、人間社会にデビューする前の「他人」(矛盾する言い方だが)、あるいは「仲間」だと言えるだろう。
「三つ子の魂百まで」
盲導犬育成団体「アイメイト協会」では、生後3ヶ月を迎える頃まで、兄弟をボランティア家庭で一緒に育てている。これは、アイメイト(同協会出身の盲導犬)の場合、特に重要となる社会性を身につけるために非常に重要な要素だ。そうした子犬たちが折り重なって寝たりじゃれている様子を見ると、後に飼い主の膝の上に乗って甘えたり、人や他の犬と走り回る犬特有の「群れる」という行動の原点を感じることができる。まさに「三つ子の魂百まで」を地で行っているのだ。