紫式部の父・為時を「大国」越前守に抜擢したのは道長?結婚適齢期を過ぎた娘をわざわざ赴任先に連れていった理由とは…
◆日本よりも進んだ国 紫式部の両親も、例の賀茂河畔の古く広い家に、子らなど皆して暮らしていたのですが、式部の母が亡くなったあと、為時は新しい妻を自邸には迎えていません。 当然、彼女らとは、「所顕はしていなかった」と考えられます。 紫式部の姉は2年前に亡くなり、兄の惟規は文章生(もんじょうのしょう)として京に残らねばなりません。 そのため、越前に赴任してゆく為時をささえる肉親は、末っ子の紫式部だけだったのです。 彼女もしかし、当初は、いやいやながら父親に付いていったのではないようです。紫式部自身、京を離れ、見知らぬ地である越前へと旅立つという高揚感と、「わたくしも、唐人たちに会えるかもしれない」という好奇心(期待感)があったかと思われます。 けだし、ひとり紫式部ばかりではなく、当時の朝廷や貴族たちのあいだでは、「日本よりも進んだ国」として、宋(唐(から))を崇(あが)める気持ちが強かったのも事実です。 ※本稿は、『紫式部の言い分』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。
岳真也
【関連記事】
- なぜ紫式部の父・為時は「藤原」なのに落ちぶれていたのか…「おまえが息子であったら」と嘆くのも納得な<一族の歴史>
- 『光る君へ』未登場「紫式部の姉」とはどんな人物だったのか?紫式部の婚期を遅らせたかもしれない<ちょっと怪しい関係>について
- 本郷和人『光る君へ』本郷奏多さん演じる花山天皇に入内した井上咲楽さん演じるよし子は、そのまま「夜御殿」で…そもそも「入内」とは何か
- 本郷和人『光る君へ』「和歌」による求愛を「和歌」で拒絶!絶世の美男美女・在原業平と小野小町のやりとりから見る<平安時代の恋愛ルール>
- マンガ『源氏物語』4話【帚木】抵抗する人妻・空蝉を17歳の「光る君」は強引に…「私を青二才と見くびってあんな年寄りの夫を」