「ヒグマ駆除に悪影響」 猟銃訴訟・二審で逆転敗訴…原告ハンターは上告、今は「丸腰」で現場に
●猟友会「もう発砲できないよね」
判決後に取材に応じた北海道猟友会の堀江篤会長(76歳)は、高裁判断を伝え聞いて「なんだそれ、と思った」と明かす。 「跳弾説には驚きました。周りでは『もう発砲できないよね』という話になってます。われわれは、弾を遮る樹木の多い森林でも充分に配慮して猟をやっていますよ。 それが、あとになって『木や草に跳弾する可能性があった』と言われて銃を取り上げられるなら、何もできません。高裁は池上さん敗訴ありきで進めていたんじゃないかと思ってしまいます」 銃猟資格者の有害鳥獣駆除は、あくまでボランティア。北海道では今年に入ってから、自治体ごとに格差がある駆除報酬をめぐって猟友会支部が駆除への協力を「辞退」する出来事が起きている。 担い手である会員の減少にも歯止めがかからない中、道内のヒグマ捕獲数は昨年度で前年比の約2倍、過去最多の1422頭に上った。 これに加えて「撃てば処罰される」ということになれば、ハンターと警察などとの協力体制の維持が難しくなる。とはいえ「駆除を辞退することは辛い」と猟友会の堀江会長は悩む。 「撃てないということは、クマが出て困っている地域の人たちを前に見て見ぬふりをしなくてはならないということ。人間として非常に辛いことです」 北海道猟友会では11月にも緊急三役会を招集し、今後の対応を協議する考えだ。
●現在、丸腰でクマの追い払いにあたっている
逆転敗訴を喫した池上さんは10月24日、「高裁判決を確定させると有害駆除の現場に悪い影響を与える」と上告に踏み切った(上告提起および上告受理申し立て)。 砂川市は本年度も池上さんへの鳥獣対策隊員の委嘱を継続、北海道振興局も狩猟免許の更新を決めた。銃を持たないハンターは、今も猟友会支部長としてヒグマなどの目撃現場に駈けつけ、プロファイリングを兼ねて丸腰でクマの追い払いや周辺への注意喚起にあたっている。 高裁で逆転勝訴した道公安委は判決後の取材に次のように回答した。 「個別の事例について取材対応及びコメントは致しかねます」
●弁護士のもとに"お礼参り"
結びに蛇足を1つ。控訴審判決を1カ月後に控えた9月20日早朝、池上さんの代理人である中村憲昭弁護士の自宅の庭(札幌市中央区)でヒグマの足跡のようなものがみつかった 報告を受けて現場を調査した札幌市の担当者は「シカの可能性が高い」と結論づけたが、現場の写真を確認した池上さんら猟友会関係者は「クマの足跡に間違いない」と話しており、周辺では不意の"お礼参り"が話題となった。