「老齢一人暮らしの母」が家に入れてくれない 2年ぶりに入った実家は「ゴミ屋敷」になっていた
ただ、この家は1階が店舗スペースとなっており、そこでは生活することができなかった。2階まで階段を使って上がるしかなく、90代の身体には相当な負担だったはずだ。2階で出たゴミや不用品がそのままになってしまうのも無理はない。 「動線以外の場所には自然とゴミやモノが溜まっていきます。でも、そこは動線ではないので生活に支障は出ないんですよ。ゴミやモノが生活スペースに浸食してくるまでは、本人も気にならないんです」(文直氏)
■孤独がゴミ屋敷を生んでいる 「孤独がゴミ屋敷を生む」といっても、そこに至る経緯や背景は多岐にわたる。それは、これまで本連載で取り上げたケースからもわかることである。そのうえで、ゴミ屋敷になってしまう人はいくつかのタイプに分けられるという。 「まずひとつは家からまったく出られなくなってしまった人。職場の悩み、人間関係の悩み、うつ、などその原因は様々ですが、そういった精神状態が部屋に現れてしまうパターンです。ゴミを外に出すこともできない“セルフネグレクト”に陥ってしまう」(文直氏、以下同)
もうひとつは家にまったく帰らないパターンだ。 「ゴミ屋敷に住んでいる人は、孤独で、人生が暗くて、仕事もうまくいっていない。そんなイメージを持たれている方がいるかもしれませんが、そうでもなかったりします。 身なりも綺麗で、仕事で少なくない金額を稼いで、タワマンなどのいい家に住んでいるけどゴミ屋敷というパターンも珍しくありません。せっかくの時間をゴミ屋敷で潰してしまうのはもったいないと、常に外に出てアクティブに過ごしている方もいらっしゃいます」
ゴミ屋敷とは別に、モノ屋敷という存在もある。その特徴は、虫が湧いたり臭いが発生したりはしていないこと。生ゴミなどの生活ゴミはきちんと処分できているが、とにかくモノが多く、生活スペースが極端に狭い。 このモノ屋敷にもパターンがある。まずは、買い物依存症のような状態に陥っているケース。モノに価値を見いだしているというよりも、消費行動がストレス発散になってしまっている。 「家に一人でいる時間が多い人の中には、モノが少ないと落ち着かないという人もいます。頑張ってお金を稼いでいるのに家に何もないと『何のために働いているんだろう?』という虚無感を覚えてしまい、モノに走ってしまう。そのモノたちを否定されると自分の人生までも否定されたような気持ちになってしまうんです。だから、解決が難しい」