「老齢一人暮らしの母」が家に入れてくれない 2年ぶりに入った実家は「ゴミ屋敷」になっていた
母がだいぶ高齢になったということで、家は子どもたちで2年前にリフォームをしている。その際、荷物も減らし部屋はほぼまっさらの状態になったはずだった。 3人には父の月命日に集まって顔を合わせる習慣があった。ただ、2年前から母は子どもたちですら2階には上がらせてくれなかったという。そして、いつものように月命日に家に迎えに行くと母の姿がない。母はスーパーマーケットに買い物へ行った先で倒れ、救急車で病院に運ばれていた。
入院するにあたって服や日用品を病室に届ける必要がある。母が頑なに入れようとしなかった2階に上がってみると、ゴミ屋敷が広がっていたというわけだ。子どもたちにとっては想定外の出来事だった。 ■母は重い病状を子どもたちに隠していた 病院で検査をすると、母はいくつかの病気を患っていた。合併症まで引き起こしている状態で、とてもじゃないがすぐに退院できる様子ではない。母は病状を子どもたちに隠していたようだ。現場の見積もりを担当したイーブイの二見信定氏が話す。
「担当医にも病気のことは言われていたそうですが、お母様は子どもに迷惑をかけないようにとずっと黙っていたみたいです。一時はもう家には戻れないかもしれないと言われていましたが、しばらくすると体調も回復していつでも退院できるようになりました。お母様も40年近く夫と商売をしてきた家に思い入れがあり、“最後は家で迎えたい”という気持ちがとても強かったみたいです」 子どもたちも母のその願いを叶えてあげたかった。しかし、多忙なゆえに母と同居することは2人とも難しい。そのため、母が嫌がっていたデイサービスを受けるという条件で、また一人暮らしを始めてもらうことにした。病院から家に戻る母のために、もう一度部屋を綺麗にしてあげたかったのだ。
一人暮らしをする日本人の高齢者は年々増加している。厚生労働省が実施している国民生活基礎調査(2019年)によれば、1986年では65歳以上の者のいる世帯のうち単独世帯は13.1%だったが、2019年には28.8%となっている。 この家に暮らしていた90代の母親も、部屋が荒れてしまったのは一人暮らしが大きな要因だ。イーブイの二見文直社長が話す。 「ゴミ屋敷になってしまったのは身体の具合と年齢がかなり影響していたと思います。高齢者の部屋を片付けているときにいつも思うのは、年をとればとるほど家の中の動線が限られていくということです。一軒家の場合、大抵は1階だけが生活スペースとなり、2階や3階はまったく使われていないことがほとんどです」