ベテラン・石田衣良が新人・井上先斗に教える実践的サバイバル術!「作家として生き残っていくために」
第31回松本清張賞を受賞し、今年9月『 イッツ・ダ・ボム 』でデビューした井上先斗さん。担当編集が「夢レベルでかまわないのですが、もし作家さんと対談できるとしたらどなたとお話ししたいですか?」と聞いて最初にお名前が挙がったのが石田衣良さんでした。 【写真】この記事の写真を見る(4枚) そして毎年9月といえば大人気シリーズ「IWGP」の新刊が発売される月。今年は記念すべき第20作『 男女最終戦争 池袋ウエストゲートパークXX 』が刊行となりました。 W刊行記念として、新人作家・井上先斗がベテラン作家・石田衣良に「作家としての生き残り方」を教えてもらう対談が実現しました! 本記事ではその模様をお伝えします。デビューを目指すみなさま、必読です。( 「オール讀物」2024年11・12月号 より転載。写真=今井知佑) ◆◆◆ 石田 デビュー作『イッツ・ダ・ボム』すごく面白かったです。これはなんで松本清張賞に応募したの? 純文学の賞でも颯爽とデビューできる作品だと思ったんだけど。 井上 自分ではエンタメど真ん中のつもりだったので(笑)。とはいえどSFや本格ミステリーみたいな専門の賞があるジャンルに分類できる作品ではないのは確かなので、松本清張賞なら受け入れてくれるんじゃないかと。あと、純粋に松本清張作品が好きなんですよ。 石田 全く先の想像がつかない本だったのがよかったね。グラフィティライターの世界に新しい謎のスターが出現して、そのスターを追いかけていくうちに真相がわかってきて、最後に当人が登場してそこでもうひとイベント起こる。エリック・アンブラーの『ディミトリオスの棺』みたいだと思ったのだけど、それは意識してない? 井上 直接は意識していませんが、『ディミトリオスの棺』は読んでいます。アンブラーのあの辺の作品の、謎の人を追っていく筋立てはハードボイルドの形式ですよね。今、ハードボイルドを書くならどんなものになるだろうということはイメージしていました。 石田 僕、ほとんどの人にはセンスがいいって褒めることはないのだけど、井上さんは本当にセンスがいい。けどね、センスがいいっていうのは心配なことでもあるんだ。日本のエンタメ小説って「親子の愛情」とか「男女の純愛」とか決まったパターンがあって、そこから外れたセンスのいい作品ってあまり受け容れてもらえないことが多いから。ちなみに、ハリウッド映画で好きな作品はありますか。